今回説明された共同研究は、交通信号機の点灯パターンを、通行する自動車の待ち時間が最短なるよう制御するための計算に、アニーリング技術を用いるというものだ。既存手法では、まず仮の点灯パターンを設定しシミュレーションを実施し、その後10秒ずつずらしながらシミュレーションしていき、より良いパターンを探し出すという形をとっていた。しかし、この手法ではシミュレーションに長い時間を要するうえ、局所探索となってしまうため最適解を導き出すことが困難だったという。
今回、Jijらは自動車の流れを数式にモデル化。Azure Quantum上のQIO(Azure QIO)を利用することで、この高次の問題の最適化を可能とした。シミュレーションが不要となることで計算時間の短縮を実現し、従来よりも幅広い解の探索が可能となったことから実際に従来方式と比較して自動車の待ち時間を20%削減する結果が得られたという。なお、この手法は信号数が増えるほど既存手法よりよい結果が出るとしている。
山城氏は、「Azure QIOであれば、3次以上の多項式もそのまま扱うことが可能であり、他のアニーリングマシンと比較し少ないビット数でより複雑な問題を解くことができるという特長がある」と説明。「今後、大規模な交通ネットワークに問題を拡張し、経済面と環境面の両方で実問題に適応して成果を上げていきたい。また、他の領域の方にもQIOを用い、新しい大規模な最適化問題にチャレンジしていきたい」と話している。
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