もともとAMDは2014年当時、性能目標を達成する上で、計算負荷向けの性能アクセラレーターとしてGPUを使用している「HSA(Heterogeneous System Architecture)」が必要なのではないかと考えていた。しかし、同社のCPUアーキテクチャ「Zen」は、HSAを使用せずにほぼ全ての性能向上を実現している。同社にとってHSAは不要だったが、性能ベンチマークには、性能試験方法としてCPUとGPUの両方の性能測定基準が提供されている。
下表を見ると分かるように、AMDが2017年に発表した「Raven Ridge」は、新しいx86コア「Zen」と統合型GPU「Vega」を組み合わせることにより、飛躍的な性能向上を達成している。このように大幅な性能向上を実現することができた要因としては、ZenコアのIPC(Instruction Per Cycle:1サイクル当たりの命令処理性能)を高められたことや、コア数を2倍に増やしたことなどが挙げられる。また、Vegaグラフィックスコアも、設計変更やプロセス技術の微細化により、性能向上を達成している。さらにAMDは、2019年に発表した12nmプロセス適用の「Zen+」コアでも、着実に性能を向上させている。
同社は、かつてRenoirプロセッサでは「12LP」プロセス技術適用のZen+コアを4つ使用していたが、2020年に、7nmプロセス適用のZen 2コアを8個使用する手法に移行することで、さらなる性能向上を実現した。Zen 2コアは、Zen+と比べてIPCが15〜20%高く、グラフィックス性能も緩やかに向上させている。
AMDは、電力管理に関しても、2014年当初に「6倍の性能向上を実現する」としていた目標に対して、6.4倍の向上を達成し、ほぼ予定通りの成果を上げている。また同社のプロセッサは、GLOBALFOUNDRIESの28nmプロセス技術から、14LPや12LPに移行しているため、プロセス技術の微細化による後押しもあったといえる。さらに現在、Ryzenモバイルプロセッサには、TSMCの7FFプロセスが適用されている。
AMDは2014年に、28nmプロセスを適用したノートPC向けAPU(Accelerated Processing Unit)「Kaveri」を挑戦目標の基準として定義し、アーキテクチャとプロセス技術を組み合わせることによって、毎年のように性能向上を達成してきた。Kaveriの後継となる「Carrizo」では、従来よりはるかに優れた配電技術を採用し、電圧マージンを緩めることでエネルギー損失の削減を実現している。
AMDが使用している効率性の測定基準は、ETEC国際エネルギースタープログラムによって定義された、一般的なエネルギー使用モデルをベースとしている。スリープ時電力や、アイドル時電力、ロード時電力などのさまざまな電力状態に向けて、複数の軽量方法が用意されている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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