Intelは2020年7月下旬、同社の技術ロードマップにさらなる遅れが生じる見込みであることを明かした。このことから、EE Timesが先日報じたように、AMDが今後、Intelの市場シェアを奪い取っていくのではないかと考えられる。
Intelは2020年7月下旬、同社の技術ロードマップにさらなる遅れが生じる見込みであることを明かした。このことから、EE Timesが先日報じたように、AMDが今後、Intelの市場シェアを奪い取っていくのではないかと考えられる。
米国の投資会社Wedbush Securitiesでバイスプレジデントを務めるMatt Bryson氏は、「現在、AMDの売上高全体の約半分をTSMCの7nmプロセス適用製品が占めているが、2021年までにはほぼ全てのAMD製品が、TSMCの最先端プロセス技術を適用して製造される予定であることから、AMDは今後、シェアを拡大していく可能性が高い」と述べている。これとは対照的にIntelは、同社にとって初となる7nmプロセス製品の投入スケジュールが再び遅れ、2022年または2023年初頭にずれ込む見込みだとしている。
2019年のx86アーキテクチャのプロセッサ市場は、Intelのシェアが84%なのに対し、AMDは約15%のシェアを獲得したと推定されている。米国の市場調査会社であるTirias Researchで主席アナリストを務めるKevin Krewell氏は、「IntelにとってCPU市場における唯一の重要な挑戦者であるAMDは、ファウンドリーパートナーであるTSMCとの協業により、多くのコアを市場に投入することで、さらにシェアを拡大していくとみられる」と述べている。
同氏は2020年7月26日に、EE Timesのインタビューの中で、「AMDは、チップレットの分野において大きな賭けに出たことにより、シェア拡大に向けた良い位置付けを確保している」と述べる。
TSMCは2019年末に、同社にとって初となるチップレットを発表した。ムーアの法則が減速していることを受け、3Dチップをパッケージングすることによって性能向上や消費電力量の低減、トランジスタ密度の改善などを実現するための方策の一環として取り組んだという。
投資銀行のCredit Suisse(クレディ・スイス)でバイスプレジデントを務めるRandy Abrams氏は、EE Timesに提供した2020年7月24日付のレポートの中で、「AMDのサーバチップは、2021年に5nmプロセスに移行し、さらに2023年までにはTSMCの3nmプロセスに移行していく予定だという。このためAMDには、市場シェアの拡大実現に向けた"滑走路"が用意されているといえる。Intelは、今後も引き続き製造ロードマップに遅れが生じるようであれば、2023年までにTSMCの3nmプロセスを採用することを検討してもよいのではないか」と述べている。
世界最大のファウンドリーであるTSMCは、Huaweiの子会社であるHiSiliconが米国政府のブラックリストに掲載されたことを受け、2020年9月にHiSilicon向けの7nmプロセスチップの製造を停止する予定だという。このためAMDは、TSMCに割り当てる7nmプロセスチップの製造量を増やそうとしている。HiSiliconは、TSMCの2020年第1四半期における生産量全体の約14%を占めていた。
Krewell氏は、「Intelのパッケージング技術『Foveros』は、3D積層を採用しているため、TSMCのチップレットソリューションよりもはるかに優れているといえる。しかしIntelは、このFoverosを発表するまでにかなりの長期間を要した」と述べる。「AMDのEPYCサーバプロセッサとデスクトップ向けCPU『Ryzen』ファミリーは、TSMCが開発したチップレットをベースとしている」(同氏)
確かにIntelには、AMDとの競争において、いくつかの重要な強みがある。Krewell氏は、「Intelは、顧客企業に対して低価格をアピールすることができる。また、『DL(Deep Learning)Boost』命令や『AVX512』など、アーキテクチャの面でも強みを持つ」と説明している。一方で、「AMDは多彩なコアやPCIeレーンなどを取りそろえているという点で、優位性を確保している」と付け加えた。
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