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迷走する米中対立、“落とし所なし”の泥沼化OMDIAアナリスト座談会(4/5 ページ)

» 2020年08月17日 11時30分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]

2020年以降の市場予測は?

EETJ コロナによる影響についてもお聞きしたいと思います。動向が読みにくいところがありますが、OMDIAとしての市場予測はどうなっていますか?

COVID-19の世界感染者数(2020年8月16日時点) 出典:日経新聞

南川氏 2020年については、思っているよりも悪くないと見ています。一つは、コロナの影響があるとはいえ、PCやスマートフォンなどの市場にはそれほどマイナスの影響が出ておらず、半導体工場も稼働しているということ。もう一つは2019年の市場が低迷していたという背景があります。2020年は、2019年比で見てもそれほど悪くはならないだろうというのが、われわれの見解です。ほぼフラットではないかと。コロナ禍においても、エレクトロニクス、特に半導体メモリは堅調だと見ています。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との戦いが長く続きそうだという前提でいうと、各国が、膨大な金額を政策で使おうとしているので、経済は少し回復していくのではないでしょうか。それに伴って、エレクトロニクスの需要もある程度回復すると予測しています。2020年は残り半年ですし、そこまでよくはないと思いますが、2021年はそこそこいくと見ています。

杉山氏 最新のわれわれのデータだと、半導体は強気ですね。電子部品は、2020年は2019年比で−6%くらいの成長ですが、半導体は2019年比でプラス4.9%くらいと予測しています。しかも、2020年3月時点での予測はプラス2.9%だったのを上方修正しているんです。データセンター向けのメモリが成長し、他の分野のマイナスを相殺する状況です。

EETJ 半導体工場の稼働率も、あまり落ちなかったですよね。

南川氏 2008年のリーマン・ショック時は、半導体工場の稼働率は70%、60%くらいまで落ちました。TSMCは50%まで落ち込んだのです。でも今回は80%台の稼働率を維持している。普段と大して変わらない状況です。

前納氏 半導体にとってはよい方向に動いていて、リモートワークが増えてPCが売れるとか、データセンターの許容量を増やすといった状況から、現在の半導体市場を支えているメモリやCPUの分野はそこまで落ちていません。ネックなのは物流だと思うので、最終製品や家電などは回復に時間がかかりそうですね。

杉山氏 データセンターではゲーミングとテレワークが追い風となっています。マイナス要因としては、コロナで企業の投資判断が遅れたりリスクマネジメントがあったりといったことのようです。コロナで、サイトに人を派遣できないとか、そういうのもありますし。

李氏 OMDIAでも、ポストコロナの影響に関する調査が既に始まっています。結果が出るのは2020年末か、2021年になりそうですが。

 総じて事業会社はリモート化に前向きですし、リモートワークやリモートサービス向けのプラットフォームを提供している企業も、それらのソリューションをより充実させようとしています。今後5〜10年で相当ホットな分野になると思うので、半導体市場にとって強力な追い風になると思います。これまでリモートサービスが使われていなかった分野にも、最後の一押しで、アプリケーションが押し込まれていく。そういったケースが増えるのではないでしょうか。

 たとえワクチンができてコロナが収束に向かったとしても、これだけ世の中がリモートで回っている以上、需要が後退することはないと思います。

EETJ 2021年のエレクトロニクス市場については、どう見ていますか。

南川氏 伸びると思いますよ。

杉山氏 それ、今のうちから言っておきましょう(笑)。周りでは、2021年は厳しいと予測している人も多いので。

前納氏 エンドユーザーの閉そく感がどうなるかというのが、キーだと思っています。一般家庭が消費できるお金がどのくらいあるのか。それもコロナしだい、というところはあると思いますが。

福良聡太氏

大庭氏 ITの方では、2020年はコロナの影響でネットワークの設置ができなかったのが回復していくと見られています。もう一つ、極力人の作業を少なくする技術、仮想化や、ネットワーク運用の自動化などの採用が増えてきています。そういう意味で、2021年は、2020年よりは上向きになるのかなと思います。

福良氏 FPD(フラットパネルディスプレイ)の工場が、中国にどんどん建設されていくのですが、装置の搬入が遅れているという話は聞いています。装置は現地に届いているのですが、搬入やセットアップができないということです。特に露光装置についてはリモートでは立ち上げができないので、遅れていると。7月から、ビザが下りるようになってエンジニアが現地に行けるようになっているというのは聞いてはいますが。そういうところも今後どんどん解消されて、2021年はよくなるのではと見ています。

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