22FDXの重要なメリットの1つとして挙げられるのが、ソフトウェア制御されたABB(Adaptive Body Bias)機能である。回路のトランジスタしきい電圧を正確に微調整することにより、半導体チップの性能(FBB:Forward Body Bias)と電力消費量、リーク電流(RBB:Reverse Body Bias)との間の適切なバランスを取ることが可能だ。ABBに付随するメリットとしては、コスト面に大きな影響を及ぼす面積最適化や信頼性の向上などが挙げられる。ABB機能は特に、IoTやウェアラブル/ヒアラブル機器などで使われている超低消費電力チップ向けとして非常に重要である。
残念なことに、22FDX設計はこれまで、ほとんどABB機能を採用してこなかった。それは、ABB機能を適切に実行するためのツール/IP(Intellectual Property)が、2019年半ば頃まで十分に存在しなかったためだ。GLOBALFOUNDRIESはずいぶん前からABBについて取り上げてきたが、2019年9月に開催した「GTC(GLOBALFOUNDRIES Technology Conferende)2019」において、ついにABBを実行するためのエコシステムの準備が整ったことを明らかにした。
同社は2020年9月24日(米国時間)、「22FDX+」プラットフォームを発表した。22FDXプラットフォームをベースとしたもので、高性能、超低消費電力、そして最新世代の設計に合わせた特定の機能を備える。そこで疑問に思うのが、「2016年に発表された『12FDX』プラットフォームはどこに行ってしまったのか」ということだ。
GLOBALFOUNDRIESは、2016年に12FDXを発表した当時、「22FDXに続くフルノードの微細化で、10nm FinFETクラスの性能を、より低コスト、より低電力で提供できる」と明言していた。
2016年当時、12FDXは業界アナリストや学者などから称賛された。NXP Semiconductrosは、次世代『i.MX』プロセッサに12FDXを適用すると述べていた。
22FDXの歴史を見ると、FD-SOI向けのエコシステム開発にはかなり長い時間がかかることが分かる。従って、特定の12FDXプラットフォームベースの製造技術は準備できているのかもしれないが、12FDXに対する関心はそれほど高くはない。それ故、GLOBALFOUNDRIESは、この技術を正式に利用可能にしたり、現時点で量産適用可能な時期を発表したりすることに消極的なようだ。
GLOBALFOUNDRIESのCEOであるThomas Caulfield氏は、「12FDXのロードマップはあるものの、それが、顧客の製品、そしてわれわれの製品を差別化できる適切な応用分野を見つけたタイミングで、正式に発表しようと考えている」と語った。
GLOBALFOUNDRIESは、2022年後半にも上場する計画だ。同社は「ただしその前に、ある程度財務的なマイルストーンを達成したいと考えている。チップ需要が高まっているおかげで、2022年までには必ず上場を実現できると確信している」と述べた。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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