九州大、高効率で高色純度の有機発光材料を開発:狭帯域発光フルカラー有機ELを実現
九州大学は、青色から赤色までの波長領域において、高い効率と色純度を有する有機発光材料の開発に成功した。この発光材料を用いて狭帯域発光フルカラー有機ELを実現した。
九州大学稲盛フロンティア研究センターの安田琢麿教授と楊旻朗大学院生、朴仁燮特任助教らによる研究グループは2020年11月、青色から赤色までの波長領域において、高い効率と色純度を有する有機発光材料の開発に成功したと発表した。この発光材料を用いて狭帯域発光フルカラー有機ELを実現した。
有機ELに用いる有機発光材料の発光スペクトルは、一般的に半値全幅が広く色純度は低い。このため、有機ELは光学フィルターなどを用いて不要な発光色成分を取り除き、色純度を高めている。一方でこの対策が、発光効率を低下させる要因にもなっていた。
研究グループは今回、汎用的で安価な含窒素芳香族化合物の「カルバゾール」と「ホウ素」を適切に組み合わせた縮合多環構造の発光材料を新たに開発した。この発光材料は、発光スペクトルの半値全幅が狭く、高い効率で可視全域をカバーすることが可能となった。しかも、「市販試薬から2〜3段階のステップで合成できる」という。
開発した発光材料を用いたフルカラー有機ELは、22〜32%という極めて高い外部EL量子効率を示すことも分かった。
カルバゾールとホウ素を組み合わせた発光材料の分子モデルと有機EL素子および、フルカラーELスペクトル 出典:九州大学
- テトラへドライトのラットリングを加圧で制御
広島大学と九州大学、筑波大学の研究グループは、新たな熱電変換材料として注目を集める硫化銅鉱物「テトラへドライト」において、大振幅原子振動(ラットリング)を圧力で制御することに成功した。
- 擬二次元ペロブスカイトレーザー、室温でCW発振
九州大学は、擬二次元ペロブスカイトレーザーにおいて、室温空気中で安定したCW(連続波)レーザーの発振に成功した。
- ポリマー光変調器、毎秒200Gビットの光信号発生
九州大学は、電気光学ポリマーを用いた超高速光変調器の開発に成功した。1チップで最大毎秒200Gビットの信号を発生、高い熱安定性を有することも確認している。
- 九大、有機膜の厚みが従来比10倍の有機ELを開発
九州大学は、厚みが従来の10倍以上でありながら、外部量子効率を最大40%に高めた有機ELを開発した。
- スマホディスプレイ、LCDからOLEDへの移行が加速
タッチディスプレイは常にスマートフォン体験の中心になるもので、画面の使用時間は通話時間やデータ消費量よりも重要なユーザー測定基準になっている。多くの人にとってスマートフォンのディスプレイはデジタル世界への“主要な窓口”であるため、ディスプレイの品質(視覚的な品質とタッチ体験の両方)がスマートフォンの価値の中核であるのはもっともなことだ。
- 大阪大ら、環状構造の有機EL発光材料を開発
大阪大学らによる共同研究グループは、ナノサイズの空孔をもつ環状構造の熱活性化遅延蛍光(TADF)材料を開発した。発光材料に新開発の環状TADF分子を用いて試作した有機EL素子は、11%台の最高外部量子効率(EQE)となった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.