なお、エリクソンモビリティレポートには含まれていないが、藤岡氏は、モバイルネットワーク体験を分析するOpensignalが2020年7〜9月に収集したデータについても言及した。データによると、5Gの通信速度は4Gよりも数倍から10倍以上高速であることが明らかになった。下りの通信速度を比較すると、米国では1.8倍、韓国では5.6倍、サウジアラビアでは12.5倍となった。ただし、「どこでもこの速度で通信できるわけではない」と藤岡氏は指摘する。「5Gスマートフォンユーザーは、いまだに多くの時間、4Gを利用しているのが現状だ」と語った。
藤岡氏は米国、韓国、中国の5G商用化と展開についても解説した。
米国で最も早く5Gサービスを開始したVerizonは、2020年末までに米国60都市に5Gを展開している。最近は850MHz帯を5G向けに活用し始めた。さらにVerizonは、AWSが提供する、モバイルエッジコンピューティング用に最適化されたインフラサービス「AWS Wavelength」を活用し、米国8都市に超低遅延のMEC(Mobile Edge Computing)を展開している。「現時点での遅延は50〜60ミリ秒だが、最終的には20ミリ秒以下を目指すと聞いている」(藤岡氏)
米国では、5Gの人口カバー率の点では、VerizonよりもAT&TやT-Mobileの方が高い。AT&Tは米国人口の60%を既にカバーしている。最も高いのはT-Mobileで、人口カバー率は80%。藤岡氏は「600MHz帯というローバンドで5Gを展開したというのがポイントだが、それ以外にもミリ波と、旧Sprintが使用していた2.5GHz帯も活用し、これら3階層の周波数帯を使って充実した5Gサービスを展開している。さらに、SA構成の全米展開も2020年8月に開始した」と説明した。
いち早く5Gサービスを開始した韓国では、人口カバー率が既に93%に達している。SAの展開も始まっている。
中国でも5G展開は加速している。2020年第3四半期の時点で、設置した5G基地局は合計69万台に上る。「2020年末の時点で、5G端末を保有している人は1億5000万人ほどではないかとみている」(藤岡氏)。SAを既に導入している点も中国の特長だ。藤岡氏は「中国ではChina UnicomとChina Telecomが同じサイトに同じ基地局を設置し、ネットワークをシェアリングすることで、共同で5Gを展開している」と付け加えた。
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