中国の半導体市場の特徴は、その大半を輸入に頼っていることだ。Handy氏の講演によると、中国の半導体輸入額は年間で1400億米ドルを超える。金額別の輸入品目では、原油と並ぶトップ2に位置する。異なる表現をすると、自給率(国内生産額/市場規模)が低い。中国政府は自給率の低さを問題視しており、2015年5月に掲げた「中国製造2025」と呼ぶ工業生産力を高める計画では、半導体集積回路の自給率目標を2020年に49%、2030年に75%と定めている。
市場調査会社IC Insightsの推定によると、2014年における半導体集積回路の自給率は15.1%である。その後はどうなったか。同社が2020年5月に発表したリリースによると、2019年における自給率は15.7%であり、5年前とほとんど変わっていない。中国の半導体市場は高い成長を続けており、生産額の伸びは市場の成長を追いかけるだけで精いっぱいという構図だ。2024年の自給率は20.7%と同社は予測する。2020年の目標である49%にもはるかに及ばない。「中国製造2025」の目標は画餅になりつつある。
加えて、米中貿易摩擦の激化が中国の電子産業と半導体産業を痛めつけている。米国製の半導体製造装置を使用して生産した半導体製品は中国の特定企業(米国連邦政府がリストアップした企業)に輸出できない。さらに、米国の半導体製造装置の中国への輸出が事実上、禁じられてしまった。このため、中国の半導体ファウンドリーは米国の製造装置を購入できず、製造技術の微細化を進められない。
この状況はリストアップされた中国企業が製品を生産できないだけでなく、米国や日本、韓国、台湾、欧州などの半導体ベンダーにとっては中国の有力な顧客を失うことを意味する。半導体産業全体にとって残念な状態に陥っている。
(次回に続く)
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