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ムーアの法則 次なるけん引役は「チップレット」 〜IEDM2020に見る先端パッケージ技術湯之上隆のナノフォーカス(35)(2/6 ページ)

» 2021年02月16日 11時30分 公開

デジタルデータ量の増大とAI半導体市場

 図2は、2020年8月13日にオンラインで開催された“Intel Architecture Day 2020”の資料の抜粋で、人類が生み出すデジタルデータ量の推移を示している。この図から、2020年にデータ量は50ZB(ゼタバイト、1021の単位)を超え、2025年には175ZBに急拡大すると予測されていることが分かる。

図2:人類が生み出すデジタルデータ量 出典:Intel Architecture Day 2020の資料より抜粋(クリックで拡大)

 このようなビッグデータを処理するために、人工知能(AI)半導体市場も急拡大する(図3)。2020年には100億米ドルを超え、2027年には833億米ドルになると予測されている。

図3:AI半導体市場の推移(2019年以降は予測値) 出典:Artificial Intelligence Chip Market(クリックで拡大)

 そのAI半導体の用途としては、スマートフォン、タブレット、スピーカー、ウェアラブル、エンタープライズ・エッジなどがある(図4)。それによれば、AIの最大規模となるのはスマートフォンで、2020年の5億米ドルから2024年には2倍の10億米ドルになると予測されている。一方、市場規模はスマートフォンには及ばないが、エンタープライズ・エッジが2020年の0.5億米ドルから2024年には5倍の2.5億米ドルに急拡大すると予測されている。

図4:アプリケーション別のAI半導体市場(予測値) 出典:MarketsandMarkets(クリックで拡大)

 スマートフォンにおいては、既に4G用のスマートフォンにNPU(Neural Processing Unit)というAIがアプリケーションプロセッサ(AP)に組み込まれている。今後、5G用のスマートフォンが普及していくため、NPUの性能やAPに占めるフットプリントの割合は増大する。従って、スマートフォン用のAI市場が成長することにも頷ける。

 また、エンタープライズ・エッジについては、これも5G通信の普及により、クラウドコンピューティングにヒエラルキーが形成されることにより、AI市場の急拡大が予測される。というのは、さまざまな5G通信機器の近くにAIを搭載したエッジコンピューティング(ここにエンタープライズ・エッジが含まれる)を設置して高速演算処理を行い、その上位階層にフォグコンピューティング、最上位にクラウドコンピューティングが位置することになるからだ。

AIはGPUからASICへ

 このように、ビッグデータの規模が拡大し、それを処理するAI半導体市場が成長するわけだが、どのようなAI半導体が主流になるかということには変化が起きる(図5)。2017年時点では、NVIDIAが市場を席巻していたGPUが97%を占めていたが、2025年にはGPUの比率が40%に下がり、ASICが50%を占めると予測されている。

図5:AI半導体の種類の変化(予測) 出典:McKinsey(クリックで拡大)

 つまり、汎用GPU(GPGPU:General-purpose computing on graphics processing units)では処理が追い付かないため、スマートフォン専用、自動運転車専用、エッジコンピューティング専用というように、特定アプリケーションに特化したAI半導体が過半を占めることが予想される。

 しかし、ASICとなったAIでも、年々規模が拡大するビッグデータの処理は大変になる。特に、AI半導体の高速処理、省電力性、そしてコストパフォーマンスなどは、チップ単体の性能向上では対応できなくなってくることが予測される。

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