米国バイデン大統領が2021年2月24日(米国時間)、以前からの予想通り、大統領令に署名した。これにより、370億米ドルの連邦政府投資を行い、半導体の供給不足に対応するための道が開かれることになる。
米国バイデン大統領が2021年2月24日(米国時間)、以前からの予想通り、大統領令に署名した。これにより、370億米ドルの連邦政府投資を行い、半導体の供給不足に対応するための道が開かれることになる。
米国半導体工業会(SIA: Semiconductor Industry Association)や情報技術イノベーション財団(ITIF:Information Technology & Innovation Foundation)などの業界団体はいずれも、直ちに声明を発表し、「バイデン大統領が、米国にとって半導体業界が極めて重要な存在であると認識しているということが分かり、非常に安堵した」と肯定的な反応を示している。
バイデン大統領は、サプライチェーンに関する大統領令に署名するにあたってスピーチを行い、「今回の大統領令は、米国が、パンデミックだけでなく、国防やサイバーセキュリティ、気候変動など、さまざまな問題が生じる新しい時代の中で直面している、あらゆる課題に確実に対応できるようにするためのものだ。その最善の方法は、国内で投資を行うことにより、米国の競争力を保護しながら磨き上げていくことである」と述べている。
またバイデン大統領は、半導体の供給不足によって自動車の製造に遅延が生じ、そのために米国の労働者たちの勤務時間が削減される結果になった点を強調した。半導体チップを手に持って掲げながら、「この半導体チップは、郵便切手よりも小さいが、人間の髪の毛1本の1万分の1という薄さの中に、80億個を超えるトランジスタを搭載しているということに驚嘆している。これは、米国に多大な力を与えてくれる奇跡的なイノベーションや設計であり、自動車やスマートフォン、テレビ、ラジオ、医療診断機器など、人々の現代生活を維持するためのさまざまな機器を実現してくれる存在だ」と述べた。
また大統領は、半導体供給不足の問題について、「サプライチェーンの安全性と信頼性を確保する必要がある。私は現在、政府高官たちに対し、業界リーダーたちとの協業によって、今回の半導体供給不足に対する解決策を特定するとともに、上下両院ともしっかり連携を取るよう指示しているところだ。法案は可決されたものの、短期間で370億米ドルを用意し、われわれにその対応能力があることを確実に示さなければならない。この点についても、さらに強く要請していく。ただし、特定の問題だけを直ちに解決できるわけではないということは認識している」と述べている。
さらに、「現政権は近いうちに、各同盟や半導体メーカー、さまざまなサプライチェーン関係者たちに手を差し伸べることにより、製造能力を拡大して、ボトルネックを解消できるようサポートしていきたいと考えている。サプライチェーン危機に見舞われてから後れを取り戻す、という事態を避けるにはサポートが必要だ。サプライチェーン危機の発生そのものを防ぐことが第一だが、緊急時の回復力(レジリエンス)を構築するということは、場合によっては、特定の素子の製造能力を米国内で拡大することも意味するだろう。われわれと価値を共有する、信頼ある仲間やパートナー、国々と密接に連携して取り組んでいけば、サプライチェーンが米国に対する手段として使われるようなことはないだろう」と述べる。
こうした取り組みの中には、(万が一の際に)製造を迅速に増加できる拠点を特定したり構築したりすることも含まれている。バイデン大統領は、「1960年代と同様に、研究開発にも投資することにより、今後数十年先を見据え、米国の製造拠点において長期的な競争力を確立していく」と述べる。
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