図4は過去7年のQualcomm SnapdragonとSamsung Exynosの面積をグラフにしたものである。Snapdragon(SDと表記)は水色、Exynos(Eと表記)はオレンジ色とした。
2社は、同じ年において同じプロセスを必ずしも用いているわけではない。一番左の「Snapdragon 810」は20nmを用いているが、同年の「Exynos 7420」は14nm。製造プロセスが異なるので面積は大きく異なっており、Snapdragon 810がExynos 7420よりも1.7倍ほど大きなものになっている。
常に最先端の仕様を実現してきたQualcommにとって、この大差は衝撃となった。プロセスを微細化すると電圧を下げることができ、チップ面積を小型化でき、結果として低消費電力を実現しやすい。20nmを選択したことで、同年に14nmを実用化したSamsungにさまざまな面で後れを取ってしまったのである。
しかしそれ以降、Qualcommは執念を持って常にSamsungのExynosよりも面積が小さいチップを作り続けている。機能を落とすのではなく、隙間のほとんどない高いインプリメント、ソフトウェアとハードウェアの協調設計をより強化させているのだ。
2021年、Samsungの5nmプロセスを活用した大型プロセッサも出そろった。TSMCの5nmと合わせて、5nmプロセスがモバイルではメインとなった。TSMCとSamsungのどちらが優れているか、どちらが高速か、どちらが小さいかなど弊社には数多くの問い合わせがある。
図5は、TSMCの5nmプロセスで製造されるHuawei/HiSiliconのKirin 9000と、Samsungの5nmで製造されるExynos 2100の比較である。弊社では0.01mm単位で測長を行っている。
通常、同じもの同士を比較することは難しい。しかし両プロセッサは同じ仕様の演算器を搭載している。GPUがともにArm「Mali G78」だ。Samsungは14コア、HiSiliconは24コアと、搭載するコア数は異なっているが、1コアの“単位”は同じである。1コアの面積を求めて比較すれば、TSMC 5nmを用いたチップとSamsung 5nmを用いたチップの面積差が求まるわけだ。同様に、CPUコアでも、ともに4コアのArm「Cortex-A55」を搭載しているので、A55の1コアの差も求めた。弊社では周波数性能、面積比などについてTSMC製とSamsung製の差を算出し、テカナリエレポートで公表済している。
2021年はさらに5nmプロセスや6nmプロセスを適用した製品も続々とリリースされる。今後もチップ開封を基本に置き、エビデンスのある比較を行っていく。
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