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微細化の極限を目指すCMOSロジックの製造技術福田昭のデバイス通信(298) imecが語る3nm以降のCMOS技術(1)(2/2 ページ)

» 2021年05月28日 11時30分 公開
[福田昭EE Times Japan]
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2025年までのCMOSロジック製造技術ロードマップ

 ここからはチュートリアル講演の概要を説明していこう。Myung‐Hee Na氏は講演で始めに、CMOSロジック製造技術の微細化ロードマップをグラフで示した。時間軸(横軸)は2011年〜2025年の範囲である。縦軸には、製造コスト(米ドル)当たりのトランジスタ数を対数(2を底とする対数)で表示した。2019年の7nm技術までは、ほぼ一定の比率で、製造コスト当たりのトランジスタ数が増加してきたことが分かる。

CMOSロジックの微細化(技術ノード)と、トランジスタの製造コスト(ドル当たりのトランジスタ数、2を底とする対数目盛り)の推移。出典:imec(IEDM2020のチュートリアル講演「Innovative technology elements to enable CMOS scaling in 3nm and beyond - device architectures, parasitics and materials」の配布資料)

 このロードマップは、MOSトランジスタ技術の変遷をかなり具体的に説明している。28nm技術でプレーナー(平面)型MOSトランジスタはHKMG(高誘電体膜金属ゲート)技術を導入した。16/14nm技術でトランジスタが立体化し、FinFETとなった。以降はしばらく、FinFETの時代が続く。7nm技術〜5nm技術では、リソグラフィ技術を大きく変更した。従来のArFレーザー液浸リソグラフィ(とマルチパターニングの組み合わせ)に代わり、EUV(Extreme Ultraviolet:極端紫外線)リソグラフィ技術を導入した。またMOL(middle of the line)の配線材料にコバルト(Co)金属を採用し始めた。

 4nm技術以降は、将来の時間領域に入る。4nm技術〜3nm技術のトランジスタはFinFETではなく、ナノシート構造のMOSトランジスタに変わると予想する。3nm以降のトランジスタ技術、すなわち2nm技術や1.5nm技術、1.0nm技術の候補はこのシリーズ連載で今後、説明していく。

 ロードマップで注目すべきなのが、時間軸(横軸)の下にあるスケーリングに関する記述だ。28nm技術〜20nm技術までは、リソグラフィ技術によって配線とトランジスタのピッチを短くすることがスケーリング(トランジスタ密度の向上)を支える手段だった。しかし20nm以降は、ピッチの短縮があまり進まなくなる。そこでCMOSロジックの基本セル(スタンダードセル)の高さ(最下層配線の本数でカウントする)を下げることで、従来とほぼ同じペースの密度向上を維持してきた。だが既に、スタンダードセルの高さを下げる手法は難しくなりつつある。今後はサブシステムあるいは回路ブロックをスケーリングする手法に移行すると予測する。

次回に続く

⇒「福田昭のデバイス通信」連載バックナンバー一覧

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