図5はS6 MaxVのカメラ処理部およびWi-Fi通信基板である。カメラ部はスマートフォンやガジェットで最上位の実績を持つ米Qualcommのチップセットが採用されている。プロセッサ、電源を最適化するための電源IC、Wi-Fiチップが全て同社製だ。この基板にデュアルカメラが接続されている。2基のカメラからのデータがプロセッサで合成され、広角な歪みのない映像として処理される。S6 MaxVにはスマートスピーカーとしての機能も備わっており、充電時には(掃除のときはモーター音が大きいため使えない)「Alexa」との連携も可能だ。Roborockでは、S6 MaxV以外の機種でも、スマートスピーカーの機能が備わったものが多数ある。
従来、掃除機にはマイクロフォンやスピーカーは無縁と思われていたが、現在は充電時の利用の幅が格段に広がっており、中国製お掃除ロボットではスピーカー、マイクロフォンは必須となっている。スマートスピーカーとしての利用だけでなく、音声指示や会話もできる。S6 MaxVでは、英語、日本語での利用が可能だ。日本語は標準語の他に、関西弁、京都弁、博多弁、津軽弁も選択できるようになっている。カーナビや会話型ロボットと同様だ。
図6はS6 MaxVのカメラ映像処理を担っているQualcommのアプリケーションプロセッサ「APQ8053」を採用している製品の一例である。APQ8053は、2個以上のカメラのデータを合成してVR(仮想現実)用の映像や全天映像を生成し、台湾HTCのVRヘッドセット「VIVE」やリコーの360度カメラ「THETA(シータ)」にも採用されている、多くの実績を持つプロセッサだ。これら以外の機器でも、中国製の製品で採用されている。
図7は、S6 MaxVの駆動系チップや部品である。コントローラーはSTMicroelectronicsの製品を採用しているが、モーターやパワー半導体は中国メーカー製が採用されている。欧米チップと中国チップが混在して活用されているのだ。部品レベルでは日本製を2個確認できたが、半導体では日本製はゼロであった。
お掃除ロボットは多機能化しており、カメラや音声処理機能を持つようになってきた今、部屋の“中核プラットフォーム”になっていく可能性がある。さらに、多数のセンサーやモーターを搭載するようになっているので、それらデバイスの統合も進んでいる。今後も分解を続けていきたい家電の一つである。
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