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» 2021年07月07日 09時30分 公開

理研、高移動度で低電圧駆動の有機半導体材料発見移動度は従来比3倍以上に

理化学研究所(理研)は、キャリア移動度が30cm2/Vs超と極めて高く、低電圧で駆動する有機半導体材料を発見したと発表した。ディスプレイやIDタグなどへの応用が期待される。

[馬本隆綱,EE Times Japan]

試作したトランジスタは駆動電圧が数Vで、急峻なスイッチング特性

 理化学研究所(理研)創発物性科学研究センター創発分子機能研究チームのキリル・ブルガレビッチ特別研究員と瀧宮和男チームリーダーらによる共同研究チームは2021年7月、キャリア移動度が30cm2/Vs超と極めて高く、低電圧で駆動する有機半導体材料を発見したと発表した。ディスプレイやIDタグなどへの応用が期待される。

 有機半導体材料は、軽量で柔軟性に優れていることから、フレキシブルエレクトロニクスなどへの応用が期待されている。ただ、これまでの材料はキャリア移動度が最大でも10cm2/Vs程度にとどまるなど、無機半導体材料に比べると移動度は低く、その応用範囲は限定されていたという。

 共同研究チームは、移動度を向上させるには有機半導体の分子構造に加え、結晶中の分子配列が重要なカギを握ると判断。また、2020年にはメチルチオ基(-SMe)を有機半導体骨格中へ位置選択的に導入することで、結晶中における有機半導体分子の分子配列を制御できることを提案していた。

 今回は、ペリ縮合多環芳香族炭化水素であるピレンに、4つのメチルチオ基が導入された分子メチルチオピレン(MT-pyrene)に着目し、その結晶構造と半導体特性を調べた。

 そして、MT-pyreneは、結晶中においてメチルチオ基が分子間相互作用の方向性と強さに影響を与え、「二次元π積層構造」と呼ばれる分子配列に変化することを明らかにした。また、MT-pyreneを用いて作製した有機電界効果トランジスタは、26素子の平均で32cm2/Vs(最高37cm2/Vs)という、極めて高い移動度を示すことが分かった。

MT-pyreneの分子構造とトランジスタの模式図および、既存材料との特性比較 (クリックで拡大) 出典:理研

 さらに、作製した有機電界効果トランジスタは、数Vという低い電圧で駆動し、急峻なスイッチング特性を持つなど、MT-pyreneが半導体材料として極めて優れていることも実証した。しかも、MT-pyreneのキャリア移動は、「バンド伝導」によるものであり、「ホッピング伝導」を示す一般的な材料とは異なることが分かった。

MT-pyreneトランジスタの伝達特性と移動度の温度依存性 (クリックで拡大) 出典:理研

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