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日本での工場建設は「適正調査中」、TSMC CEOが言及「特殊技術の工場」とも

TSMCは2021年7月15日(台湾時間)、投資家向けカンファレンスコールにおいて、グローバルの生産拠点での投資計画に触れ、日本での半導体工場建設も視野に入れていることを明らかにした。

» 2021年07月16日 14時15分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]

 TSMCは2021年7月15日(台湾時間)、投資家向けカンファレンスコールにおいて、グローバルの生産拠点での投資計画に触れ、日本での半導体工場建設も視野に入れていることを明らかにした。

 日本では、「TSMCジャパン3DIC研究開発センター」が法人として既に設立されているが、TSMCのCEOであるC.C. Wei氏は、TSMCジャパン3DIC研究開発センターでは、TSMCが主導し、パートナー企業をまとめ上げて3D ICパッケージの研究開発に取り組むと語った。なお、「3D ICパッケージを量産するのか」とする質問に対しては、「現時点でその予定はない」と述べた。

 TSMCが日本で半導体工場を設立するとの報道もあるが、それに対してWei氏は、「工場を建設するかどうかについて、デューデリジェンスを行っているさなかだ」と明言。TSMCのチェアマンであるMark Liu氏は、成熟したプロセスノードの工場拡張も含め、グローバルの生産拠点については「まだ計画中のプロジェクトが幾つかある」と付け加えた。

 Liu氏は、「日本での(工場建設の)可能性も排除しない。Wei氏が先ほど話したように、日本については、“特殊技術の工場”*)を建設するかどうか、デューデリジェンスの過程にある。ただし、結論を公表するのは時期尚早だ。顧客のニーズ、運用効率の評価、コストや経済などの要素に基づいて、最終的な結論を出す」と語った。

*)Liu氏は、“specialty technology fab”と述べた。

 なお、TSMCは今後3年間で1000億米ドルの設備投資を行う計画だが、Liu氏は、上記の「計画中のプロジェクト」は、1000億米ドルの投資計画には含まれていないと述べた。

 台湾の工場については、先端の5nmプロセス「N5」および3nmプロセス「N3」向けに生産能力を拡大していく。Liu氏は「台湾は今後も、TSMCのR&D活動における中心地であり続ける」と強調した。

 米国では、アリゾナ州の300mmウエハー工場の建設が既に始まっており、計画通りに進んでいるという。同工場では2022年後半に製造装置の搬入を開始。フェーズ1の量産は、2024年第1四半期に月産2万枚の規模で開始する予定だ。

 中国では、2017年に南京工場が完成し、2020年第3四半期から、16nmプロセスでの量産がスタートした。現在の生産能力は間もなく月産2万5000枚に到達する見込みだ。さらに、顧客からの「切実なニーズ」(Liu氏)に応えて、28nmプロセスの生産能力も拡充する。28nmプロセスの量産は2022年後半に開始し、2023年半ばには月産4万枚の規模を目指すという。

 さらにLiu氏は、適切な利益を得るべく、ウエハー価格の増加についても顧客と交渉していくとした。

車載マイコンの生産量を増加

 カンファレンスコールでは、2021年第2四半期(4〜6月期)の業績を発表。それによると売上高は前年同期比で19.8%増となる3721億5000万ニュー台湾ドル(約1兆4650億円)、純利益は同11%増の1343億6000万ニュー台湾ドル(約5281億円)だった。営業利益率は39.1%、純利益率は36.1%となった。

 プロセスノード別の売上高比率は、7nmが31%と最も多く、次いで最先端の5nmが18%、16nmが14%、28nmが11%となっている。プラットフォーム別ではスマートフォンが42%、HPC(High Performance Computing)が39%、自動車は4%である。前四半期(2021年第1四半期)比の売上高成長率はHPCと自動車が最も多く、それぞれ12%となった。

プロセスノード別(左)およびプラットフォーム別の売上高比率 出典:TSMC(クリックで拡大)

 同年第3四半期(7〜9月期)の売上高については、146億〜149億米ドルと予測した。

 Wei氏は、「半導体不足および不安定なサプライチェーンの影響で、半導体供給については2022年にかけてもタイトな状況が続くとみている」と語った。半導体への需要が高まる中、Wei氏は「2021年のファウンドリー業界の成長率は20%と予測している。当社は、それを上回る成長率を達成する見込みだ」と述べた。

 同氏は車載マイコンの供給状態についても言及した。「顧客と直接やりとりし、当社の車載半導体の製造能力を再配置することで世界の自動車産業を支援してきた。2021年上半期、当社は車載用マイコンの生産量を増加することに成功した。2021年通年における当社の車載用マイコンの生産量は、2020年に比べると60%近く増加する見込みだ。こうした取り組みにより、当社の顧客における車載マイコンの不足は、2021年第3四半期から大きく改善されるだろう」(同氏)

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