情報通信研究機構(NICT)は、住友大阪セメントや早稲田大学と共同で、ミリ波無線受信機を簡素化できる光・無線直接伝送技術を開発、受信した高速ミリ波無線信号を光ファイバーへ直接伝送することに成功した。
情報通信研究機構(NICT)は2021年7月、住友大阪セメントや早稲田大学と共同で、ミリ波無線受信機を簡素化できる光・無線直接伝送技術を開発、受信した高速ミリ波無線信号を光ファイバーへ直接伝送することに成功したと発表した。
NICTはこれまで、光信号を無線信号に変換する無線アンテナ局送信部を簡素化できる技術を開発してきた。しかし、無線信号を光信号に変換する受信部の簡素化はまだ実現していなかったという。そこで今回、これを可能にする2つの要素技術を開発した。
その1つは、強誘電体電気光学結晶(ニオブ酸リチウム)を利用した高速光変調器。無線信号を光信号に変換する光・無線変換デバイスである。結晶の厚みは100μmで、従来の5分の1以下に薄くすることで、101GHzのミリ波にも対応できる高速性を実現した。
もう1つは、光・無線変換デバイスより出てきた光信号を、光ファイバーに直接伝送するためのファイバー無線技術である。局発信号を遠隔の光局発信号発生器で発生させて光ファイバー伝送を行い、光・無線変換デバイスで生成される信号周波数を変換する技術。この技術により、ミリ波無線信号を光領域で周波数変換できるようになったという。
研究グループは、開発したこれらの要素技術を組み合わせ、64QAM変調時に毎秒70Gビットを超える高速ミリ波無線信号を、光ファイバー信号に直接変換する伝送システムを構成し、その実証実験に成功した。
実証実験の具体的な手順はこうだ。まず、ファイバー無線信号送信器で、光2トーン信号の片方の成分をデータ変調して再合成することにより、101GHzミリ波信号へ直接変換できるRoF信号を生成した。次に、ミリ波無線送信機でRoF信号を101GHzミリ波信号に変換し、ミリ波アンテナを経由して空間へ放射する。
空間伝送されたミリ波信号は、ミリ波無線受信機側のアンテナで受信、増幅器で信号レベルを調整した後に、開発した高速光変調器ベースの光・無線変換デバイスに入力する。ファイバー無線受信器では離調周波数84GHzの光2トーン信号が生成され、片方の成分だけがミリ波無線受信の光/無線変換デバイスに入力される。
ミリ波無線受信機とファイバー無線受信器からの入力により、101GHzミリ波信号で変調された光信号は、ファイバー無線受信機に送信される。そして、ファイバー無線受信器で生成された84GHz離調光2トーンのもう一方の成分と組み合わせ、中心周波数が17GHz(=101G〜84GHz)のRoF信号に周波数下方変換を行う。このRoF信号を光検出器で受信し復調することにより、データを復元するという。
研究グループは、101GHzの無線信号を5mおよび20mの距離で伝送する実験を行った。この結果、誤り訂正前のエラーベクトル振幅値(EVM)で、64QAMにおいてオーバーヘッド20%の場合、帯域幅14GHzの伝送が可能になる。この値は、毎秒71Gビットの伝送レートに相当するという。
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