しかし、NTN計画の中で最も大胆な要素は、ソフトバンクが米AeroVironmentと共同で行う巨大な成層圏ドローンの開発だ。このドローンによって、その地域に従来の通信インフラがなくとも、特別な装置を必要とせずにモバイル機器にLTEや5Gを提供できるという。
2019年4月、ソフトバンクは、子会社のHAPSMobileを通じて、「High Altitude Platform Station(HAPS)」プロジェクトを開始した。2020年10月8日には、翼幅78mの同社製ドローン「Sunglider」が初の成層圏試験飛行に成功した。
Nicholson氏によると、このドローンを地球上の20km上空で数カ月間飛行させ、スマートフォンユーザー向けに最大200kmをカバーするモバイルサービスを提供する計画だという。HAPSシステムは、地上のインフラがあまり整備されていない地域でのカバーや、災害時の復旧作業などに利用される予定だ。
ソフトバンクの広報担当者は、「HAPSMobileは2023年までにサービスを開始したい」と述べている。テストでは、このドローンが空から4G LTEを提供できること確認できている。ただ、HAPSMobileは、高空の電波状況を整理するために、国際電気通信連合(ITU)の協力を必要としている。HAPSMobileは、地上局と高空のドローンとの間のフィーダーリンクには高周波数帯を使用し、サービスリンクには既存のスマホが接続可能な周波数帯を適切な国や地域で使用する、としている。
HAPSMobileは、2023年に開催されるITUの世界無線通信会議(WRC-23)に参加し、周波数の問題を解決していく予定だ。
ソフトバンクのNTN計画は2021年6月に発表されたが、実際に誰がこのサービスを利用するのかについてはまだよく分かっていない。Nicholson氏によると、これまでのところ、ソフトバンクは世界の携帯電話会社や政府機関とNTNプログラムの利用について話し合っているという。
Elon Musk氏をはじめとする億万長者たちは、LEO衛星群の構築に膨大な資金を投じると主張しているが、静止衛星や低軌道衛星、近距離無人機を使ってサービスを提供するソフトバンクの3本柱の計画は、純粋なLEO衛星群よりもリスクが少ないといえるかもしれない。
ただし、ソフトバンクが全ての衛星を地球上で運用できるかどうかは別問題だ。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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