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» 2021年07月26日 14時30分 公開

暗号通貨マイニングデバイスで「5Gを増強を目指す」米新興企業

わずか8年前に設立された新興企業が、5G(第5世代移動通信)スマートフォンユーザー向けのカバレッジを米国内で利用できるようになる“DIY型のCBRS(市民ブロードバンド無線サービス)ネットワーク”を配備するために、1000米ドル(もしくはそれ以上)を支払うよう、ユーザーを説得することはできるのだろうか。

[Dan Jones,EE Times]

 わずか8年前に設立された新興企業であるHeliumが、5G(第5世代移動通信)スマートフォンユーザー向けのカバレッジを米国内で利用できるようになる“DIY型のCBRS(市民ブロードバンド無線サービス)ネットワーク”を設置するために、1000米ドル(もしくはそれ以上)を支払うよう、ユーザーを説得することはできるのだろうか。

暗号通貨のマイニングで無線LANを提供

 Heliumは、ブロックチェーン技術を活用したIoTネットワークを提供する企業で、現CEOのAmir Haleem氏が設立した。2019年6月、「世界初」(同社)となる、独自の暗号通貨「HNT(ヘリウムトークン)」マイニングデバイスである「Helium Hotspot」を発売。同デバイスを導入したユーザーは、Helium Hotspotから無線LANを提供し、報酬としてHNTを獲得する仕組みだ。最初に展開されたのはテキサス州オースティンの1000台で、1台当たり495米ドルであった。現在、さまざまなメーカーが同社のネットワーク向けのIoTルーターを供給している。

 これによって確かにHeliumは、ユーザーが“DIY”によって無線ネットワークを構築する仕組みを確立した。だが、そうした実績と、ユーザー自身が配備するIoTネットワークの創出には大きな違いがある。後者では、ユーザーは、ライセンス不要の周波数帯域を利用した上で5Gネットワークを構築することになるが、スムーズに動作させるには主要な通信事業者と連携する必要がある。

 Heliumは、米国の都市全域やその他の国々の大半で広範囲のIoT接続性を提供してきた。同社は顧客が導入したHelium Hotspotを利用して、LPWA(Low Power Wide Area)センサーやデバイス向けのリンクを実現している。Heliumは、わずか50台から100台のHelium Hotspotがあれば、大半の都市をカバーすることができると述べてきた。

 米国では、Helium Hotspotはライセンス不要の915MHz帯で動作し、LoRaWAN(Long Range Wide Area Network)仕様をベースとした同社独自のプロトコル「LongFi」を利用している。各Helium Hotspotは、どのLoRaWAN IoTデバイスでもサポートでき、通信範囲は、そのエリアが都市部か郊外かにもよるが約1.5〜16kmとなっている。

 立ち上げから2年にも満たないHeliumだが、今では世界75カ国の5000以上の都市で4万6000台を超えるHelium Hotspotが稼働している。現在では、異なる帯域幅を用いるさまざまな同デバイスが利用可能になっている。EU向けモデルではライセンス不要の868MHz帯で、中国向けモデルでは470MHz帯で動作する。自分の国で今後、どの帯域幅でHelium Hotspotが稼働するかはこちらのページで確認できる。

CBRSを展開して5Gを増強

 Heliumの次の目標は、顧客が展開できるCBRSミッドバンド5Gゲートウェイを展開し、通信事業者がHeliumのネットワークを活用して5Gカバレッジを増強できるようにすることだ。

 現時点では、4G CBRSネットワークにアクセスできるのは、最新の「iPhone」およびAndroidスマートフォンのみとなっている。多くの通信事業者は、次のステップとして、CBRS帯での5Gサービスの構築を目指している。

FreedomFiの5Gゲートウェイ

 2021年4月に、HeliumはゲートウェイメーカーのFreedomFiと提携し、2021年後半に発売予定の5G(3.5GHz対応) CBRSゲートウェイを発表した。既存のHelium Hotspotとの大きな違いは、HeliumのユーザーがHNTを獲得するためには、1つ以上の米国の通信事業者と協力する必要があることだという。

 HeliumとFreedomFiは、この事実をよく分かっている。

 HeliumのCOO(最高執行責任者)であるFrank Mong氏は、米国EE Timesに対し、Heliumの5Gホットスポットでのローミングを顧客に許可することについて、「米国のティア1キャリアと話し合っている」と述べた。FreedomFiは、同社の5Gゲートウェイに関するFAQの中で、「当社は現在、米国の複数のモバイルネットワーク事業者と協力している」と述べている。「2021年9月にHelium対応FreedomFiゲートウェイの出荷を開始する前に、これらのパートナーシップのうち少なくとも1つを公表したい」(FreedomFi)

 AT&T、T-Mobile、Verizonあるいはケーブル事業者や小規模なMVNO(Mobile Virtual Network Operator)など、どの事業者がこれに申し込むのか、あるいはどの企業が申し込むのかを注視する必要があるだろう。関係者にとっては、ライセンス不要の狭い周波数帯でIoTデバイスをサポートすることよりもリスクの高い提案だ。

 それでも、2021年9月までに何らかの合意が得られることを願いたい。

 その他の大きな違いの一つは、5Gオフロードの要件を満たすために、ユーザーが設置する必要がある機器のコストが予想されることだ。5Gシステムとして動作させるためには、500米ドルのFreedomFiゲートウェイと、アンテナが必要になる。

 CBRSアンテナは、1本当たり500〜5000米ドルの価格帯だ。ユーザーが5Gオフロードを実現するためには、ゲートウェイとアンテナの組み合わせで、少なくとも1000米ドルが必要になるだろう。これまでの325〜429米ドル(Helium Hotspotの価格)よりも高額になる。5Gのカバレッジ増強に一役買えるとしても、1000米ドル以上もの投資に興味を持つ人が十分にいるのだろうか。米国のユーザーに広くCBRSを提供するために、どれだけのユーザーが5Gアンテナ設置に関わる必要があるのかは未知数である。

【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】

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