MOSFETでは、チャンネルを短くするとしきい電圧が低下するという「短チャンネル効果」が微細化を阻害する。対策としてはチャンネルを薄くすることが考えられる。ただしシリコン(Si)のチャンネルはあまり薄くするとキャリアの移動度が下がる恐れがある。
2次元材料は単原子層と薄い。このため原理的には短チャンネル効果が起きにくい。またキャリアが2次元方向にしか流れないので、移動度がシリコン(ある程度の厚みがある状態)と同等以上であることが期待できる。
2次元材料でも当然ながら、半導体がトランジスタのチャンネルに使われる。前回で述べたように、遷移金属(Transition Metal)とカルコゲナイド(Chalcogenide)の化合物「遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)」が2次元の半導体材料であり、チャンネル材料の有力な候補でもある。具体的には「二流化タングステン(WS2)」や「二流化モリブデン(MoS2)」などが研究対象となっており、実際にトランジスタを試作して特性が評価されている。
試作されている2Dトランジスタ(FET)の構造は、かなり基本的なものだ。バックゲート構造やデュアルゲート構造などが使われる。これらの構造は特性評価には適しているものの、集積回路には適していない。低抵抗コンタクトの形成、不純物拡散(ドーピング)の制御、ゲートスタックの制御、高品質な薄膜の成長技術など、量産に適した集積回路の具現化と商用化に向けた課題は山積している。
そのような中、imecは講演でフォークシート構造のナノシートチャンネルに二流化タングステン(WS2)を組み込み、シミュレーションによって特性を評価してみせた。シリコンのナノシート構造FETに比べ、二流化タングステン(WS2)のFETは同じ消費電力でも高い周波数で動作した。将来に期待を持たせる結果だ。
(次回に続く)
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