こうした状況を踏まえ、今回の産学連携では2つのテーマを掲げ、共同研究に取り組むことにした。そのテーマとは「資源開発から電池材料の開発、製造までのプロセス革新」と、「電池廃材や廃電池リサイクルのプロセス革新」である。協定の契約期間は2023年12月末までとなるが、状況によっては契約延長の可能性もあるという。
具体的な取り組みはこうだ。「資源開発から電池材料の開発、製造までのプロセス革新」では、より電池用途に特化したプロセスを新たに構築する。これによって、CO2排出量の低減や生産コストの低減、材料生成のリードタイム短縮を実現していく。
このため、ニッケルやリチウム、コバルトの金属資源開発、精錬工程から電池材料の開発製造に至るまで、一気通貫で既存のプロセスを見直す。例えば、正極に用いられるニッケルの製造工程はリードタイムが平均約12カ月と長い。CO2排出量も多いという。
この理由は、ニッケルの主な用途がステンレス・合金向けのため、製造プロセスが電池用に最適化されていないためだという。そこで、電池用に特化したプロセスを新たに構築することで、「CO2排出量の低減」「生産コスト低減」「材料生成リードタイムの短縮」を実現していく。
「電池廃材や廃電池リサイクルのプロセス革新」では、電池製造時の廃材や使用後の廃電池を、効率よくリサイクルするための技術を開発していく。このため、総合的なレアメタル精錬技術を保有する大学と電池メーカー、さらにはリサイクル回収や処理を担う商社が協力し、リサイクル過程で発生するCO2排出量やリサイクルコストの大幅低減に取り組む。
共同研究に関する投資額は非公表とし、具体的な金額は明らかにしなかったが、「それなりの規模で投資する。研究費用を積み増す可能性もある」(岡部氏)という。これらの研究成果は2025年までに実用化したい考えで、2030年には電池産業全体でCO2排出量を、現状に対し80%削減するのが目標である。
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