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» 2022年02月17日 10時30分 公開

SOT方式の次世代不揮発性メモリ向け新材料を開発高スピン流生成効率と熱耐久性両立

東京工業大学とキオクシアは、スピン軌道トルク(SOT)方式を利用した次世代不揮発性メモリに向けて、スピン流生成効率が高く熱耐久性にも優れた新材料の開発に成功した。

[馬本隆綱,EE Times Japan]

YPtBiの成膜条件を最適化、最大4.1のスピンホール角を実現

 東京工業大学工学院電気電子系のファム・ナムハイ准教授と白倉孝典大学院生(博士後期課程)および、キオクシアメモリ技術研究所デバイス技術研究開発センターの近藤剛主幹を中心とした共同研究チームは2022年2月、スピン軌道トルク(SOT)方式を利用した次世代不揮発性メモリに向けて、スピン流生成効率が高く熱耐久性にも優れた新材料の開発に成功したと発表した。

 磁性体を利用した不揮発性メモリは、スピン流で磁性体の磁化の向きを制御することによって動作する。スピン流を生成するための方法として、現在は「スピン移行トルク(STT)方式」が一般的に用いられているという。ところが、この方式はスピン流生成効率が小さく、磁化制御のためには大電流が必要となっていた。

 このため近年は、SOT方式が注目されているという。SOT方式はスピン流の生成効率を、スピンホール角(θSH)だけでなく、非磁性体の構造によっても制御できるからだ。ここで重要となるのが、純スピン注入源に用いる非磁性体である。

 大きなθSHを有する非磁性体としては、「W(タングステン)」や「Ta(タンタル)」などの重金属と、「Bi2Se3(セレン化ビスマス)」や「BiSb(アンチモン化ビスマス)」といったトポロジカル絶縁体が知られている。ところが、重金属は半導体集積プロセスに対して親和性を有するが、θSHは0.1〜0.4程度と小さい。一方で、トポロジカル絶縁体は、θSHが「1」を超えるものの、熱耐久性は300℃程度と低い、という課題があった。

 研究チームは今回、ハーフホイスラー型トポロジカル半金属(HHA-TSM)の一種である「YPtBi」に着目し、スパッタリング法を用いてYPtBi薄膜を作製、動作実証を行った。HHA-TSMは、ハーフホイスラー構造を持つ3元合金で、スピンホール効果の強いトポロジカル表面状態(TSS)を有している。

 実験では成膜の温度を変えてYPtBi薄膜を作製し、薄膜に含まれるBi量を調べた。この結果、作製したYPtBi膜は、600℃という高温まで安定していることが分かった。さらに、スパッタリング法によりYPtBi膜と強磁性体CoPt膜のヘテロ接合膜を作製し、スピン伝導特性も評価した。YPtBi膜は平均表面粗さ約2Åという平たんな界面となり、CoPt膜は強い垂直磁気異方性を示した。今回はYPtBiの成膜条件を最適化することで、最大4.1という巨大なθSHを実現することに成功した。

左上図はV族、VI族に基づいた従来型のトポロジカル絶縁体の結晶構造とそのエネルギーバンド構造。右上図はHHA-TSMの結晶構造とそのエネルギーバンド構造、左下図はスパッタリング法で成膜をしたYPtBi膜におけるBi組成比の成膜温度依存性。右下図はYPtBi膜と磁性体CoPt膜のヘテロ接合膜での磁化反転の実験におけるパルス電流印加シーケンスおよび、それに対応する磁化反転の結果[クリックで拡大] 出所:東京工業大学他

 作製したヘテロ接合膜を用いて、パルス電流による磁化反転の実験を行った。これにより、効率よくCoPtが磁化反転することや、外部磁場を反転させることで、磁化反転の方向が反転することを確認した。これらの結果により、YPtBi膜はその巨大なθSHによって、重金属に比べ1桁も小さい電流密度で、CoPt膜の磁化反転が可能となるスピン流を生成できることが分かった。

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