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「それでもコロナワクチンは怖い」という方と一緒に考えたい、11の臨床課題世界を「数字」で回してみよう(69)番外編(6/9 ページ)

» 2022年04月04日 11時30分 公開
[江端智一EE Times Japan]

「コロナ後遺症への対策」「ワクチンとアレルギー反応」

 さて、ここから、後半に入ります。ここからは、"K"さんから発せられたこれまでの疑問、いわゆる「コロナ後遺症への対策」「コロナワクチンとアレルギー反応」等について、シバタ先生の膨大な知識と見解が炸裂(さくれつ)します。少々つらいかもしれませんが、なんとか付いてきてください(断腸の思いで、大幅に削除しました。ぜひ、全文メール*)をご参照ください)。

*)引用文献が完全に記載されたメールの全文はこちらから



1. はじめに

“K”さんへ

お返事を拝読いたしました。国産不活化ワクチンへの期待に対して落胆させてしまったようで申し訳ありません。

 国内ワクチンは、「今後ありうる新型インフルエンザ」や「その他の新興感染症」に対応するために、国内に不活化ワクチンの開発ノウハウを蓄積することが目的なのかもしれません。

2. 本日のClinical Question(CQ)について

 本日のCQは、前回の内容を継承して、以下のように設定いたしました。

CQ.7 「不活化ワクチン」とは何ですか? どうやって作るのですか?

CQ.8 ワクチン開発って、どれくらい難しいのですか?

CQ.9 各種のコロナウイルスのワクチンや治療薬が登場してきている今、「私たちはラッキー」と言えるのでしょうか?

CQ.10 免疫の曖昧さが引き起こす証明不可能な臨床課題「ADE(抗体依存性感染増強)」とは何ですか?

3. Clinical Question(CQ)

【CQ.7】 「不活化ワクチン」とは何ですか? どうやって作るのですか?

【A.7】 「不活化ワクチン」とは、新型コロナウイルスの毒性を無力化した「ウイルスそのもの」です。

 国産、かつ不活化ワクチンへの期待は安全、安心という意味ではもっとも手堅い選択です。まずはその作製方法をご紹介したいと思います。

 略図を見ていただくと分かる通り、不活化ワクチンは

(Step 1) ウイルスを増やす
(Step 2) ウイルスを分離する
(Step 3) ウイルスを不活化する
(Step 4) 添加物を加える

の大きく4つの行程によって作られます(ちなみに、mRNAワクチンの製造方法とはかなり異なります(参考:筆者のブログ)。

 特に、不活化ワクチンである、インフルエンザワクチンについてはその工程はかなり成熟した技術となってきているようです。近年のインフルエンザワクチンの開発成功率が高いことが、それを裏付けています。

 総論で言えばいわゆる「枯れた技術」ではありますが、各論で言えばインフルエンザ不活化ワクチンにおいてさえ技術は発展途上(参考)のようです。国内ワクチン生産メーカーには、国内での高品質な不活化ワクチンの開発ノウハウを蓄積して欲しいです。

 2000年までは日本は本当に、本当にワクチン後進国(参考)でした。2007年の「ワクチン産業ビジョン」策定で若干盛り返しの機運があったようですが、順風満帆とは行かなかったようです(参考)。

 このパンデミックをきっかけにして、国内に「ワクチン開発製造メジャー」が誕生してくれると良いなぁ……とひそかに期待しています。

【CQ.8】 ワクチン開発って、どれくらい難しいのですか?

【A.8】 ワクチン開発は、「茨(いばら)の道」です。

 ざっと挙げるだけでも、

(1) 次々に現れる亜型(変異株)からどれを選択してワクチンを作るかを決定する

(2) 新たな変異株それぞれに対してADE(後述)がない事を、まずは実験室レベルで証明する

(3) 抗体を獲得していない人(ワクチンをまだ接種していない人、新型コロナに罹患していない人)を集める

(4) 接種組と非接種組にランダムに分ける(職業、生活習慣、流行地域などが均等となるように調整)

(5) 一定期間後に抗体価、感染率、重症化率などを集計し、有効率が既存のワクチンとくらべて遜色がない事とADEの発生がない事を証明する

などなど、さまざまな段階で困難が生じます。

 上記(1)は後発組のアドバンテージでもあると同時に、開発陣は非常に悩ましい選択を迫られます。当初は選択肢がなく、オリジナルの株に対するワクチンを作るしかなかったですが、現在はα(アルファ株)、β(ベータ株)……、δ(デルタ株)、ο(オミクロン株)そしてそれぞれの亜種と、選択肢はよりどりみどりです。

 「どの株を元にしてワクチンを作ったら結果として最も重症化率、死亡率が下がるのか」を、論理的に考察して上司を納得させなければなりません。担当者は胃が痛いことでしょう……。

 臨床試験の参加者の中に既に抗体を獲得している人が混じってしまったら、効果の比較ができなくなってしまいます。ワクチン接種歴は簡単に確認できても、本人が無症候性感染を起こしている可能性があります。濃厚接触歴がない事、抗体価をチェックして抗体のないこと等を確認する必要があります。

 重症化例については慎重にADE(抗体依存性感染増強)の発生を除外する必要(後述)があります。また、一般論ですが日本で数万人規模のワクチン未接種者を集めること自体が困難です。現在の日本は、人口の8割が接種済みであり、残りの2割の多くは年少人口もしくはワクチンの適応外だった人たちです。

 そもそも、「現段階までワクチン接種を避けていた人が、果たして臨床試験に積極的に参加してくれるだろうか」という地味に高いハードルが存在します。これだけの困難が予想されるのに、「もともと10のワクチンが申請されたら、そのうちの1つくらいしか十分な効果が得られずに審査が通らない」というのが現実なのです。

 私が担当者だったら、もう、泣きます。

 国産ワクチンの重要性を叫びつつ、国内でのワクチンの臨床試験自体が実際上とても困難であるという認識は政府としても共有しているようです。

 しかし、過去の例を見れば「9割が失敗する」というのがワクチン開発の現実です。

 政権からの直接・間接的プレッシャーで担当者の胃に穴が空かないことを祈りつつ、適切な評価を経てワクチンが完成することを願いたいと思います。

【CQ.9】 各種のコロナウイルスのワクチンや治療薬が登場してきている今、「私たちはラッキー」と言えるのでしょうか?

【A.9】 ワクチンに関して、「私たちはラッキー」です。

 現在の世界線において、複数の新型インフルエンザワクチンが存在することが当たり前になっています。しかし2019年パンデミック当初の常識ではワクチン開発は一般にうまくいかないことの方が普通でした。

 mRNAワクチンの初実用化事例としての新型コロナワクチンが、9割を超す発症予防効果と既存ワクチンと遜色のない安全性を両立したことは、本当に幸運でした。では、私たちが現在享受している現実が、どれくらいラッキーな出来事だったのかを振り返ってみたいと思います。

(1)ワクチンの開発成功率は(前述の通り)10%程度しかない

 ワクチン開発の成功を「第II相試験開始から10年以内に米国食品医薬品局(FDA)の認可を取得できた」ことと定義すれば、「ワクチン開発の成功率は10%」というのが結論です(参考)。

 この論文はファイザー・モデルナのmRNAワクチンが承認される前に投稿されたのですが、この論文の筆者はその結論部分で「もしも1年半でワクチンが認可されることになれば、それは「an unprecedented achievement(前例のない成果)である」と述べています。

 今回の新型コロナワクチンの開発速度はまさにワープスピードでした。

(2)mRNAワクチン開発の技術は、十数年の間に急激に進歩した

 ここでは、以下の2つのコラムを紹介します。

(A)mRNAを利用した創薬ベンチャーの出発点からの紆余曲折を書いたコラム

(B)日本RNA学会のホームページにワクチン開発に重要となった「シュードウラシル」の効能の発見についてのコラム

 両コラムによれば、1989年の実験によって人工mRNAによるタンパク質の発現が行われてから「がんワクチンをmRNAで作る」という実際的な試みが論文化されるまでの2017年(参考)まで、30年の間に数百人の研究者が関わっていることがかいつまんで紹介されています。

 パンデミック発生があと数年でも早ければ、私たちはこれほど短期間でワクチンを手に入れることができていなかったことになります。

 このmRNAワクチン技術がほぼ完成したタイミングでのパンデミックは、言葉は不謹慎ですが「本当に運が良かった」と、一人の医師として心の底から思いました。なお、中国も従来技術を延長した形で不活化ワクチンをビックリするような早さで実用化しました。

 ちなみに、中国は、『『従来技術を延長して不活化ワクチンを完成させた中国製ワクチンの方が安全面で優れている』と主張しています。

(3)SARS、MERSのワクチン開発は失敗している

 過去に地域的に猛威をふるったコロナウイルス感染症として、SARS(重症急性呼吸器症候群)MERS(中東呼吸器症候群)が知られています。これらに対するワクチンも、当然開発が試みられていました。

 しかし、実際にはSARSとMERSのワクチン開発は失敗に終わっています。その要因の1つは、SARS、MERSのワクチン開発には免疫学的な問題もあり、実用化には大きな壁がありました。

 それが、Antibody-Dependent Enhancement(ADE:抗体依存性感染増強)と呼ばれる現象です(後述します)。

 幸いなことに今回の新型コロナワクチンの開発においてはADEの問題は顕在化しませんでした。これは本当に単純に運が良かった、と個人的に捉えています。

(4)潤沢な資金と強力なリーダーシップの存在があった

 今回の新型コロナ用ワクチンにはトランプ大統領のもとで「ワープスピード作戦」として100億米ドルの予算がついたと報道されています。開発されたワクチンの価格は投じられたコストが反映されているためかこれまでのものよりも高額に設定されており、パンデミック以前であれば経済性の面から開発中断もあったかもしれません。

 経済的な要因は非常に実際的かつ大きな問題で、(3)のSARS、MERSのワクチン開発が失敗した大きな要因の1つには、流行の規模が感染者数そして継続時間ともに小さすぎたことが挙げられます。

 ワクチン開発には多大なコストと時間がかかります。にもかかわらず、脅威度としての感染者数と流行期間が共に収束してしまっては、企業は社員を養っていけません。

 ファイザー社、モデルナ者の両ワクチンの売り上げは2021年だけで500億米ドル参考)に上ると言われており、投じた予算(ワープスピード作戦の100億米ドルのうちいくらが両社に振り分けられたのかは不明ですが)を大幅に上回っています。

 人命とお金と政治力の3つで特大のリターンをたたき出したこの投資への決断は「(他の政策の評価とは切り離して)さすがは実業家出身の大統領」と言わせるものだったと思います。

 以上のような幸運が重なって、現在の私たちがあります。



 新型コロナワクチンは、ざっくりと

(1)死者、重症者を10分の1に減らし、
(2)実効再生産数を押し下げる

働きをします。

 もしワクチンが存在しなければ第5波での医療崩壊と死者数は相当な数に上ったと思います。恐らく第5波の収束前に6波が発生し、経済活動は規制、自粛を問わず深刻で、医療も相当に混乱したことでしょう。

 現在は散発的に見られる在宅コロナ死亡事例がもっと頻発していただけでは無く、「心筋梗塞や脳梗塞の急性期治療が受けられない」など、非コロナ死亡事例が急増する事態に陥っていたのではなかろうか、と思います。

【CQ.10】 「ADE(抗体依存性感染増強)」とは何ですか?

【A.10】 「不完全にしか働かない抗体」が、感染の悪化を招いてしまうことです。

 前項までに度々登場していたADEとは、Antibody-Dependent Enhancementの略です。日本語では抗体依存性感染増強、抗体依存性増強現象などと訳されます。

 ワクチンや感染によって作られる抗体には、完全な働きをする中和抗体と、中途半端な仕事をする不完全な抗体の2種類があります。中和抗体だけが作られることが理想なのですが、確率的に不完全な抗体が作られることは避けられません

 また、例えばα株に対する完全な中和抗体が、変異株に対しても完全な中和抗体として作用するとは限らず、その一部が不完全な抗体として振る舞う可能性があります。このような、病原体を無効化することに対して「不完全にしか働かない抗体」が、うっかり感染の悪化を招いてしまうことがあります。

 これをADE(抗体依存性感染増強)と呼びます。

 現在までに、「どうして病原体に対する抗体が逆に悪さをするのか」について複数の経路が報告されています。

 ADEが免疫学の分野(というか医師の間で)有名になったきっかけは、デング熱ウイルスへのワクチン開発によって犠牲者が出たという話題だったと思います。

 デング熱にはDEN-1からDEN-4までの4つの型が存在します。ある1種類の血清型に感染すると、その血清型への中和抗体が作られ、再感染に対して防御的に働きます。いわゆる「普通の予防接種の効果」です。

 しかし、その中和抗体は「他の3種類に対して部分的にしか働かない」どころか、一定の確率で「かえってその抗体のせいで感染が重篤化してしまう」という効果を発揮してしまいます(参考)。

 これが、ADEの具体例です(この例でも分かる通り、悪さをする抗体産生の原因はワクチンに限定されません)。

 結果として、このワクチンを接種したにもかかわらずADEと思われるデング熱の重症化で死亡した子供が続出し、最終的に死亡数は600人ほどになったと報道されています。

 それでは、今回の新型コロナ感染症には、ADEは存在するのでしょうか?

 ワクチンによる直接的な副反応のみならず、ワクチンによって誘導される抗体そのものが感染悪化や死亡の原因になり得るADEという現象については、有識者会議でも(当然ですが)議論されています。一言でまとめると「可能性はあるが、現在までの報告では注意深く観察しても認められない」というのが有識者会議の結論です。

 厚生労働省のFAQでも、2022年2月の時点で「現在までの報告はない」という姿勢を維持しています。ですが、より正確には「現在までにワクチンによる臨床的なADEの報告はない」です。

 これまでの研究で、新型コロナ感染症に感染増強抗体が関わっている可能性を大阪大学の研究室が2021年5月に報告しています(プレスリリースおよび実際の論文)。

 この論文中で研究グループは

(1)「新型コロナ感染によって作られる抗体の中に、感染増強を引き起こす可能性のある抗体が存在すること」

(2)「新型コロナに感染していない人にも感染増強抗体を持っている人が存在すること」

(3)「ワクチン投与によって感染増強抗体の産生が高まる可能性があること」

などを報告しています。

 そして、臨床的に有意なADEの報告は見つけられませんでしたが、ADE発生の懸念は10を超す新型コロナウイルス感染症関連のレビューで指摘されています。では、なぜ有識者会議や厚生労働省がこの話題に触れているのか ―― 一言で言えば「ワクチン開発においてADEを考慮するのは常識」だからです。

 既存の多くの感染症で起こりうることが報告されているADEという現象が、SARSやMERSと同じ種類のウイルスであるSERS-CoV-2(新型コロナ)だけで発生しないだろうと都合良く決めつけることはできません

「ワクチンを作ってみたが、実際に感染が流行したら、ワクチンを打った人から死んでいく」

 このような悪夢が現実とならないように「ワクチン開発者は培養細胞レベル、動物実験レベル、そして臨床試験のさまざまなレベルにおいて慎重な検討を行った」とされています(参考1参考2)。

 把握し切れていませんが、ざっと調べた限りではワクチンと変異株の組み合わせでADEが超低確率でしか発生しないことを確認した文献は見つけられませんでした

 「オミクロン株は本来ならばただの風邪レベルまで脅威度が下がっているはずなのに、ワクチンを接種したがためにADEが惹起され、重症者や死者が発生し続けている」という論に対しては、

(1)「3回の接種で中和抗体がしっかりと産生される(参考)」という報告と

(2)「ADEは有効な中和抗体と、中途半端な抗体の比が後者に傾いたときに起こるはずである」という推論で、

一応は反論できます。

 しかしながら、

(1)ADEがウイルス感染全般に対して珍しくない現象であることや、

(2)普通に新型コロナに感染した後の血清中にもADEを引き起こす抗体が一部含まれること(参考

が報告されていることも事実です。

 今後発生する株を含めた変異株に対して、現行のワクチンが作る抗体が中和抗体の役割を果たさず、中途半端な抗体になってしまう可能性は、常にあります。この中途半端な抗体が「ADEを引き起こしてしまう可能性がない」と決めつけることは、科学的に正しくありません。

 ですから、理論上は「ワクチン接種者とワクチン非接種者のそれぞれで血清を集め、ADE活性を定量比較することを変異型毎に数百人ずつ行って比較する」という検討が必要です ―― が、実際問題として、超困難な研究です

- 規模、資金、ワクチン非接種者を接種者と同じ条件の患者の準備が難しい

- ADE活性の測定、それ自体が難しい

- 多施設共同で、全ゲノム解析を前提とした同意書を得るのが難しい

……などなど、クリアするハードルが山ほどあります。無責任ではありますが、私には無理なので、世界の誰かが行ってくれることを期待したいと思います。

 ここまでの検討をリアルタイムに行うことは困難ですが、最低限できること(既にやられているはずのこと)もあります。それは、「新規の中等症以上の入院患者・死亡者におけるワクチン接種/非接種の比が、実際のワクチン接種/非接種の比よりも小さいこと」について、変異株ごとにしっかりとモニタリングすることです。

 この比がイコールとなる日が来たら、ワクチンが無意味になったという意味になりますし、万が一にもこの比が逆転したならば、ワクチンが害悪になったことの傍証の一つとなるように思います。この辺りの数字は恐らく、有識者会議では出ていると思うのですが、残念ながらネット上では発見できませんでした。



 ここまでは、集団として有意なADEが発生しているかどうか、についての話をしましたが、個々の人についてワクチンによるADEが本当にない事を証明するのは事実上不可能です。ADEを発生させた抗体が、ワクチン由来なのか、感染によって作られた抗体によるものなのか、区別ができないからです。

 たとえクローン人間を作ってワクチン有り/無しに振り分けて比較しようとしても、作られる抗体の内容はクローン間ですら完全一致することがないほど多様性に富んでいる(by ノーベル賞受賞者 利根川進)からです。私には証明方法が思いつきませんでした。

 理論的に起こる可能性があり、かつ、証明困難なワクチン副反応としてのADEは陰謀論者にとっては格好のネタです。ADEを含む記事を読む際には、その論拠の確からしさについて、慎重に検討しなければならないと思います。

4. 総括:シバタから見た「新型コロナワクチン」とは

 私は、ワクチンは「冬の寒空の下であてがわれた毛布のようなもの」だと考えています。

 その毛布はほぼ真っ白でキレイなのですが、一部に黒いシミがあります。確率的には低いものの、一部の人に、また将来的に毒になるかもしれないシミです。

 数万人規模の臨床試験と数十億回の接種実績によって、その毛布は確かに寒さから身を守ってくれる効果があることが分かっていますが、逆に心筋炎や心膜炎、長引く発熱や倦怠感などの確率がゼロでない事も明らかになりました。将来の変異株に対するADEも完全に否定されたわけではありません。

 その一方で、社会全体として見たときには「強毒性とされるデルタ株主体の第5波において死亡率が激減したこと」は、現在の我が国のワクチン行政が「大きく間違っていないこと」の客観的根拠になっているように思います。

 しかし、現時点の常識が間違っていて将来にひっくり返るという事例は、医療でも科学でも(あまりあって欲しくないことですが)度々経験することです

 “K”さんの選択が、最終的に”K”さん個人とご家族にとって利益となるか、不利益となるかが確定するのは、無責任なようですが将来になってみないと分からないというのが真実です。

 現時点では個人の選択の自由を制限するほどの強権を発動するような状況にはないと思いますし、将来的に問答無用でウィズコロナの生活を送る時期が遠からず来ることを思えば、思いやりと寛容の姿勢は必須と思います

 既感染やワクチン接種の有無が社会を分断することにならないように、行政とマスコミにはぜひとも配慮をお願いしたいと思います。そして、「ワクチン接種は当たり前」という常識を疑うチャンスをいただいた”K”さんに、感謝の意を表します。

シバタ

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