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「それでもコロナワクチンは怖い」という方と一緒に考えたい、11の臨床課題世界を「数字」で回してみよう(69)番外編(2/9 ページ)

» 2022年04月04日 11時30分 公開
[江端智一EE Times Japan]

”K”さんが置かれている、コロナ禍の状況

 それでは、”K”さんのプロフィール紹介から、前編を始めたいと思います。

 ”K”さんのメールからは、”K”さんを個人的に特定できる情報が入り込む恐れがありましたので、失礼ながら、私の方でまとめさせていただきました。

 最初にいただいたメールに対して、私は、現在持っている私の知見を繰返すことしかできませんでした*)

*)筆者ブログ「そこで提案ですが、いっそうのこと「私(江端)を信じてワクチン打ってみませんか?

 しかし、その後、私は”K”さんのメールを何度も読み直して、”K”さんの質問事項が、ワクチン接種をしなかった「過去の話」だけでなく、現状のご自分の状況を冷静に分析した上で、ご自分とご家族の「未来の話」に関して、質問されていることに気が付きました。

 「(i)コロナ後遺症の対策」「(ii)コロナ感染者のワクチン接種の必要性」「(iii)変異型に対する既存ワクチンの有効性」などは、私自身も、非常に興味のある内容でしたが ―― 私には、これに答えるだけの知識はありません。

 これに対しては、臨床的見地 ―― つまり『医療従事者の現場を知り尽している人の意見』が必要だと考えて、この段階で、シバタ先生を巻き込むことをひそかに決意していました。

 その後も、私は”K”さんとメールのやりとりをして、”K”さんの置かれている『コロナ禍の状況』を教えてもらうに至りました。

 (1)感染後遺症に苦しみ、(2)飲食店の経営者(クラスター直撃と経営危機の真っ最中)で、(3)(接種の是非が社会的な議論になっている)4人のお子さんのお母さん―― こんなすさまじい新型コロナウイルスのトリプル攻撃の被害者を、私は知りません



 ここで、前回(コロナシリーズ第7弾)の概要を、簡単に紹介してみたいと思います。

 このコラムでは、「一定の条件下であれば、ワクチン非接種が非論理的であるとは言えない」と論じています。しかし。そもそも、一定の条件下にいられない人 ―― 例えば、”K”さんのような状況にある方 ―― に対する検討がありません。つまり、社会的課題に対するアプローチとしては、不十分であると言わざるを得ません。

 そして、シバタ先生と私によるこれまでの7回のコラムで、決定的に欠けていたことが、個人的事情に基づく検討が絶無であった、という点です ―― もっとも、全ての読者の方に対する検討ができるわけではありません。ですが、私(江端)がその観点に気が付かなかったことは、批判されてもいいと思います。

 次に、”K”さんが、新型コロナワクチン接種が「できない」理由を以下にまとめてみました。

 私(江端)は、(1)健康上の問題もなく、免疫系の病症もなく、(3)過去にアナフィラキシーによる緊急搬送を一度も体験していません。そんな、私のような人間が、”K”さんの「恐怖」を、自分ごととして理解できるでしょうか ―― できるわけがない

 ワクチンと自己免疫系の問題が結びついていることは、ちょっと勉強した人なら自明のことです。“百万人の中での一人(100万分の1)”というアラフィラキシーの発生率は ―― それが、数値上は、東京都で10人程度の発生率であろうとも、『アナフィラキシーの死を実感する苦痛の中で、緊急搬送された』という過去の生々しい記憶の恐怖に、対抗できるわけがありません。

 また、自己免疫系の疾患が、子どもに遺伝しやすいことは、私たちの日常で十分に観測される事実です。そして、上記の「自分の遺伝子の問題によって、(ワクチン接種の影響が)子どもにも現われる可能性を否定できない」を読んだ時に ―― 『まったくその通りだ』と呟きながら、その視点に至れなかった自分の不明を、心底から遺憾に思いました。

 つまり、シバタ先生と私の過去7回のコラムは、「社会的課題に対するアプローチ」と、「個人的事情に対するアプローチ」の両方において、不十分であった、と結論づけるしかありません。



 さらに、”K”さんは現在、コロナ後遺症に苦しんでいます

 以下が、メールから読み取らせていただいた、それらの症状になります(ちなみに、”K”さんが、コロナに感染して発病や、救急車で搬送されるまでの、詳しいレポートもいただいておりますが、紙面の都合上割愛しております)。

 で、さらにこの後、絶望的な報告が続きます。”K”さんによれば、これらの苦痛を改善する決定的な治療法や薬品が、現時点では「ない」のです。

 現在”K”さんは、試行錯誤を繰返して、症状の緩和するクスリを選んで、毎日を凌いでいらっしゃるようです(また、医療機関に対する、この「コロナ後遺症の患者に対する扱いの”雑”さについて、『憤まんやるかたない』ご様子も伺っていますが、こちらについては割愛させていただきます)。



 この時点で、私のブログを読んだシバタ先生から、『”K”さんのメールを開示していただけませんか?』というご相談を受けました ―― 私にとっては、渡りに舟のご相談でしたので、私は、”K”さんの許諾をいただいて、「江端ファイアウォールを使った、お二人の間のメールの交換のゲートウェイ」を始めました。

 以下は、冒頭の"K"さんからのメールを読まれたシバタ先生が、"K"さんの疑問に答える形で送られたメール(江端編集済み)をご紹介したいと思います*)

*)引用文献が完全に記載されたメールの全文はこちら

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