NXP Semiconductors(以下、NXP)は2022年5月3日(オランダ時間)、ギガビットTSN(Time Sensitive Networking)スイッチを搭載したクロスオーバーMCU「i.MX RT1180」を発表した。
NXP Semiconductors(以下、NXP)は2022年5月3日(オランダ時間)、ギガビットTSN(Time Sensitive Networking)スイッチを搭載したクロスオーバーMCU*)「i.MX RT1180」を発表した。それに伴い、NXPの日本法人であるNXPジャパンは同年5月13日、記者説明会で「i.MX RT1180」の詳細を紹介した。
*)クロスオーバーMCUとは、MCUとMPUの“ギャップを埋める”ことをコンセプトにNXPが開発した製品で、同社はこれを「i.MX RTシリーズ」として展開している。
i.MX RT1180は、NXPのMCUとしては初めてギガビットTSNスイッチを搭載したことが最大の特長だ。加えてギガビットTSNポートを最大5つ搭載する。TSNスイッチを介したポートが4ポート、TSNエンドポイントコントローラーを1ポートという構成だ。これにより、PROFINETやEthernet/IP、EtherCAT、CC-Link IE Field Networkなど、既存のイーサネットベースの産業用ネットワークプロトコルと、CC-Link IE TSN、PROFINET over TSN、OPC UA Pub/Subなど、TSN技術に拡張した新しいプロトコルの両方をサポートできるようになる。
NXPジャパンのエッジ・プロセッシング製品部でマーケティング・マネージャを務める浜野正博氏は、「産業用IoT(モノのインターネット)やインダストリー4.0といった形で工場のスマート化が進んでいるが、既に稼働している工場の機器を入れ替えることは現実では難しく、従来使用しているネットワークを継続して使わざるを得ない状況になっている。そのため、既存の工場をスマート化する場合は、従来の産業用ネットワークとインダストリー4.0に向けた新しいネットワークとの間で相互通信が必要になる。i.MX RT1180は、既存と新規の産業用ネットワーク、両方に対応できるマルチプロトコルネットワーキングにより、産業用IoTを一元化できることが特長だ」と語る。
既存のクロスオーバーMCU「i.MX RT1170」でもTSNはサポートしているが、こちらはTSN対応の1Gビット/秒(bps)イーサネットポートが1つ搭載されているのみである。そのため、工場に、TSNベースの産業用ネットワークを使う新しい機器を増設する場合、イーサネットハブ(イーサネットスイッチ)を外付けしなければ機器間を接続できない。i.MX RT1180では、TSNスイッチを搭載することで2ポート以上のTSNポートをサポートできるようになり、エッジデバイス同士をデイジーチェーン接続することができる。これにより、外付けのイーサネットスイッチが不要になり、コスト削減につながる。
i.MX RT1180は、Arm「Cortex-M7」(動作周波数800MHz)と「Cortex-M33」(同240MHz)を搭載したデュアルコアアーキテクチャになっている。DC-DCコンバーターを内蔵していて単一電源入力なので、PMIC(電源管理IC)が不要になり回路設計が容易になる。動作温度範囲は−40〜125℃。車載部品の品質規格であるAEC-Q100の認証も取得する予定だ。
セキュリティ機能としては、NXPのクロスオーバーMCUとしては初めて、「EdgeLockセキュアエンクレーブ」を搭載した。これは自律的に動作する自己完結型のセキュリティサブシステムで、産業用IoTアプリケーションにおいてシステムワイドのセキュリティの実現を容易にするという。
i.MX RT1180は、2022年7月から一部の顧客向けにサンプル出荷を開始する予定だ。
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