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不安定な時代だからこそ進化は進む! 「Echo Show 15」「iPhone SE3」を分解この10年で起こったこと、次の10年で起こること(63)(2/3 ページ)

» 2022年06月16日 11時30分 公開

「Echo Show 15」の中身

 Amazonは2021年モデルから、自社専用のカスタムプロセッサ「AZ」をEchoシリーズに活用している。2022年のEcho Show 15では第2世代のAZプロセッサ「AZ2」が採用されている。AZ2のパッケージにはAMLOGICの社名ロゴと「POP1-C」というチップ型名が刻印されており、AmazonとAMLOGICが共同で開発したものであることが判明した。

 また組み合わされる電源ICは日本のローム製であることも判明した。ロームは多くのプロセッサ(Intel製など)の電源ICに採用された実績を持つメーカーなので、順当な組み合わせだと思われる。AMLOGICはテレビボックスなどのメディアプレーヤーで多大な実績を持つ半導体メーカーだ。Amazon製品としては2019年の「Fire TV Cube」にもプロセッサとして採用されている。いきなりAmazonに採用されたわけではなく、多くの市場実績や、Amazonでの実績を持っているからこそ、AZ2の開発メーカーに抜擢(ばってき)されたわけである。

 表1は、2021年発売の首振りタイプのEcho Show 10と2022年発売の壁掛けタイプのEcho Show 15に搭載されている主要チップの比較である。おおむね同機能のチップで構成されているが、内部のチップ点数が減り、Wi-Fiチップ以外は総入れ替えとなっている。Echo Show 10では台湾MediaTekのチップセット(プロセッサと電源IC)であったが、上記のようにAMLOGIC、ロームの組み合わせに変更されている。また2チップ構成であったプロセッサ部が1チップとなっている。

表1:「Echo Show 10」とEcho Show 15の搭載チップの比較[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

「AZ2」プロセッサを開封

 図3は、AZ2(=AMLOGIC POP1-C)のチップ開封の様子である。弊社ではAmazon以外に使われるAMLOGIC製チップのほとんどを開封して解析している。そのため、それらとAZ2の画像を比較し、他チップで公開されている仕様などと合わせて、AZ2の内部構造をおおよそ解析することができている。

図3:Amazon「AZ2」プロセッサの開封解析[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 MIPIやUSBのインタフェースは形状で判断できるので、接続関係などもほぼ解析できている。田の字型の場所が2カ所あり、4コアの高速CPU、4コアの高効率CPUが搭載されていることが分かる。またINT8のNPU(Neural Processing Unit)がAMLOGICの別チップで使われているのでNPUの場所も特定できている。CPU、GPU、NPU、ISP(カメラ用プロセッサ)が搭載されるAmazon Echoの性能を最大化するプロセッサになっているわけだ。

 AZ2は、2世代ほど前の12nmプロセスノードで製造されている。ゲームなどの高度な3D(3次元)用途に使うわけではない、スマートディスプレイ専用なので、12nmでも十分なのである。今後もAmazonのホームIoT製品の進化を継続して解析していきたい。

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