コアスタッフ社長の戸澤正紀氏は半導体商社の視点から見た、半導体/電子部品の供給不足に関するこれまでの状況や現状について語った。
同社では、半導体不足を受けた顧客からの需要増で、2021年度の売上高が前年度比309%増の261.4億円と大幅な成長となった。戸澤氏は「この金額は当社の正しい実力値を表しておらず、あくまでひっ迫した半導体不足の効果だ。例えば100円だった製品が100倍の1万円で売られるようなことも決して珍しくなかった。現在ではさすがにそれほどのものは減ってきたが、それでも20倍、30倍というものは普通にある」と語っていた。
月別に受注金額を見ると、2021年6月に大きく増加したのち、夏にはいったん減少したものの、同年9〜12月に増加を続けた第2波があった。その後、2022年1、2月には再度減少したが3月に急増(第3波)。「4、5、6月についてもまだまだ高いレベルで推移している」という。ただし、今後の需要については、南川氏の説明と同様に、大きく下がっていくと予想している。戸澤氏は、「特に当社は2021年度が良すぎただけに、その反動は大きいとみている。ただ少なくとも現時点では、大手メーカーで在庫がたまってきてはいるものの、中小企業にはまだ不足しているところが多く、今後2、3カ月はこうした状況が続くだろう」と述べた。
実際に顧客からの注文が多いのは、少し前の電源系ICなどの、先端プロセスではない一般的な半導体だったという。また、32ビットMCUやCPU、FPGAも厳しい納期が続いているほか、「金額が大きくなく見えにくいが、顧客が苦労しているのがモジュールだ。複数の部品を使っていることから当然、単体よりものが入らない可能性が高くなる」としている。
半導体、電子部品業界の現状について戸澤氏は、「全般的な不足傾向は解消しつつあるが、一部ではさらに悪化しており、かなり『二極化』している印象だ。顧客は必要な部品のうち1点でも手に入らなければ、製品を作ることはできない」と述べ、不足は緩和しているものの出荷レベルではいまだ改善していないとした。また、半導体/電子部品の納期が悪化した2021年度に2重、3重で発注した製品で入手しやすい製品については、入荷が始まっており、その結果、「商社と顧客の在庫になり始めている」という。ただ、こうして入手できる製品が増えてきたことで顧客のマーケットでの購入意欲は高まってきたという。
戸澤氏は、「半導体不足は最終的に、一時的な終息に向かうと思うが、それがいつになるのかについては、今のところ読めない」と述べ、今後想定する4つのシナリオを示した(下図右)
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