ここまでの分析で市場規模の大きい装置分野は、欧米の装置メーカー4社がシェアを独占していることが分かった。それでは、いつ頃から、この4社がシェアを独占するようになったのだろうか?
図4に、2000年から2021年までの装置メーカー売上高ランキング・トップ10を示す。この図から、ランキングのトップ5が、AMAT、ASML、Lam、東京エレクトロン(TEL)、KLAに固定されたのは、2007年以降であることが分かる。
ただし、トップ5の中での順位が時々入れ替わっている。例えば、ランキング1位に君臨しているのはAMATであるが、2011年に1度だけASMLがトップに立った。また、2000年から2008年まで2位が定位置だったTELは、その後、次第に順位を下げ、2015年以降は4位になっている。
その結果、2017年から2021年までは、1位AMAT、2位ASML、3位Lam、4位TEL、5位KLAの順位で移行している。
このように2007年以降はトップ5が固定されたが、トップ6位以下は、毎年、目まぐるしく順位が変動している。その中で、2013年以降、洗浄装置で世界シェア1位のSCREENが6位を占めるようになった。ところが、2016年に初めてトップ10にランクインした韓国のSEMESが、2021年にSCREENに替わって6位に躍進した。
少し脇道に逸れるが、SEMESの生立ちやその成長の経緯について、以下で説明する。
Samsung Electronics(以下、Samsung)は1993年にDRAMの企業別売上高で世界1位に躍り出た。そのSamsungは、Nikon、TEL、大日本スクリーン製造(略してDNS、後のSCREEN)など日本の装置メーカーに、Samsung向けの装置は韓国内でつくるように求めてきたという。
しかし、多くの日本メーカーは、技術流出を恐れてそれを拒否した。ところが、SCREENだけはSamsungの要求に応じて、1993年1月にSamsungと合弁でK-DNSを設立した。K-DNSとは「KoreaのDNS」という意味であろう。そしてK-DNSには、SCREENの技術者が多数派遣され、Samsung用の洗浄装置はここで生産されることになった(図5)。
実際に、現地生産された洗浄装置の1号機は、1994年5月にSamsungの器興工場に納入された。その後もK-DNSはSamsung用の洗浄装置を供給し続けた。そのK-DNSは、2005年1月に社名を「SEMES」に変更した。SEMESの“SE”は、Samsung Electronicsの頭文字である。
さらに2010年にはSCREENはSEMESの持ち株を売却し(というよりSamsungに買い取られ)、SEMESはSamsungの100%子会社となった。これを機に、Samsungの洗浄装置は全てSEMES製となり、SCREENは1台もSamsungに装置を供給できなくなったという話が伝わってきた。要するに、SCREENは軒を貸して母屋を乗っ取られてしまったわけだ。
そして、2021年にとうとう装置の売上高で、僅差ではあるがSEMESがSCREENを追い越してしまったというわけでである。
さて、話を元に戻す。以下では、主な装置メーカーの売上高推移を見てみよう。
図6に、欧米日韓の主な装置メーカーの売上高推移を示す。多くの装置メーカーが、2000年のITバブルの時に大きなピークがあり、2008年のリーマンショック後に落ち込み、2018年のメモリバブル時にピークがあり、2019年のメモリ不況後、2020年のコロナ騒動などとは関係なく、売上高を増大させているように見える。
そして2013年以降は、AMAT、ASML、Lam、TELのトップ4と5位のKLAの差が開き、また5位のKLAと6位以下の差も拡大している。マラソンに例えるなら、先頭集団がAMAT、ASML、Lam、TELの4社で、少し離れて5位にKLAが位置し、さらに離れたところに6位以下の第2集団が形成されている、というところだろう。
そこで、以下では、5位以上の装置メーカーと、6位以下の装置メーカーに分けて、その成長性に着目して分析を行いたい。
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