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東芝、GFMインバーターによる系統安定性を実機検証系統周波数の低下を約3割も抑制

東芝は、マイクログリッドの安定稼働を実現するGFM(Grid forming)インバーターについて、その効果を実機検証したと発表した。GFMインバーターを搭載した太陽光発電を用いた実験では、系統周波数(東日本では50Hz)の低下を約3割抑制できることが分かった。

» 2022年08月30日 13時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

マイクログリッドで、慣性力不足を補い電力供給を安定化

 東芝は2022年8月、マイクログリッドの安定稼働を実現するGFM(Grid forming)インバーターについて、その効果を実機で検証したと発表した。GFMインバーターを搭載した太陽光発電を用いた実験では、系統周波数(東日本では50Hz)の低下を約3割抑制できることが分かった。

 日本政府は、「2050年カーボンニュートラル」を2020年に宣言。脱炭素社会の実現に向けて、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーの主力電源化に取り組んでいる。特に、災害などによる大規模停電時には、自立して電力を供給できる分散型エネルギーシステム「マイクログリッド」に期待する。ところが、再生可能エネルギーの割合が高まると、発電量の変動などによって系統周波数の変動も大きくなり、停電する可能性が高まるという。

マイクログリッドの概念図(クリックで拡大) 出所:東芝

 こうした中で東芝は、配電系統内の系統周波数を維持するためのGFMインバーターを試作し、模擬的に構築したマイクログリッドで、その効果を検証した。今回の研究は、パシフィックパワーや環境エネルギー技術研究所、産業技術総合研究所および、パシフィックコンサルタンツと共同で行った。

 東芝が試作したGFMインバーターは、新たな制御アルゴリズムを実装した。それは、慣性力がない従来のGFL(Grid following)インバーター向け制御アルゴリズムとは異なるという。これによって、再生可能エネルギーの出力や電力需要が急激に変動した場合でも、GMFインバーターが疑似的な慣性力を発生させることで系統周波数の急激な低下を抑え、安定的な電力供給を行うことが可能になった。

実機検証したGFMインバーターの外観(クリックで拡大) 出所:東芝

 東芝はこれまで、模擬マイクログリッドとしてGFMインバーター搭載の蓄電システム(定格20kW、電池容量14.9kWh)5台と、ディーゼル同期発電機(定格125kVA)1台および、負荷試験装置2台を用いて、蓄電池の放電時における効果検証などを行ってきた。この実験によって、負荷変動が50kWの場合でも、系統周波数の低下は0.6Hz(従来は2.4Hz低下)に抑えられることを実証した。

 さらに今回の実験では、GFMインバーターの効果を実環境に近い形で検証するため、GFMインバーター搭載の蓄電池は用いず、GFMインバーター搭載の太陽光発電(定格20kW)1台と、ディーゼル同期発電機(定格125kVA)1台のみを用いて検証した。この結果、負荷変動が10kWの場合に系統周波数は0.7Hz低下したという。従来(1Hz低下)に比べ約3割抑えられたことになる。

GFMインバーター搭載の太陽光発電と内燃機関を有するディーゼル同期発電機の実機検証(上図はクリックで拡大) 出所:東芝

 蓄電システムと組み合わせた場合についても検証した。蓄電池へ充電する時も系統周波数の低下は0.6Hz(従来は2.2Hz低下)になり、約7割も抑えることができたという。さらに、マイクログリッドでの使用が想定される、内燃機関の同期発電機などとの並列運転に適した慣性力を供給すると、GFMインバーターの瞬時的な負荷を22kWから16kWへと、3割も低減できることが分かった。

左は蓄電池への充電時の実機検証、右は慣性力を変えた時の実機検証(クリックで拡大) 出所:東芝

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