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老後を生き残る「戦略としての信仰」は存在するのか「お金に愛されないエンジニア」のための新行動論(6)(1/12 ページ)

今回は、「老後を生き残る「戦略としての信仰」」をテーゼに掲げて検討していきます。宗教は果たして私を幸せにしてくれるのか――。それを考えるべく、「江端教」なる架空の宗教団体をベースに話を進めます。

» 2022年08月31日 11時30分 公開
[江端智一EE Times Japan]

今回のテーマは、すばり「お金」です。定年が射程に入ってきた私が、あらためて気づいたのは、「お金がない」という現実でした。2019年には「老後2000万円問題」が物議をかもし、基礎年金問題への根本的な解決も見いだせない中、もはや最後に頼れるのは「自分」しかいません。正直、“英語に愛され”なくても生きていくことはできますが、“お金に愛されない”ことは命に関わります。本シリーズでは、“英語に愛されないエンジニア”が、本気でお金と向き合い、“お金に愛されるエンジニア”を目指します。


宗教は私を幸せにしてくれるのか

 前回のコラムで、お金を増やす方法としての最適解が「インデックスファンド」である、という目処を得て、これからの私の投資の方針は決まりました。

 しかし、インデックスファンドには大きな弱点があります。「時間」です。それも10年単位の時間が必要になる、という厄介な問題です。正直、私は10年出遅れた、という感じです。

 もっと早くから、「お金に愛されない自分」をキチンと理解していれば、こんなことには・・・いや、ダメだっただろうなぁ。だって私、今でも、「投資」に対して、今一つ、燃えないからです。

 前回の原稿を書き上げた後で、この件について後輩と話していたのですが、私の勤務している研究所においても、投資で既にかなりのお金を稼いでいる研究員もいるらしいことを知りました ―― それも『明日、会社を辞めても大丈夫』という位のお金、らしいです。

江端:「それって、もう本人の資質だよね」

後輩:「そうですね。『そういうことに興味がある』というのは、もはや『才能』だと思います」

 お金に愛されない者は、何をしても愛されない、と書きかけて ―― ん? このフレーズどこかで使ったぞ、という記憶がよみがえってきました。

 これでした。私、このコラム「英語に愛されない者は何をしても愛されない、という出発点」で、英語と私の関係について、既に結論を出していました。なんのことはない、私は、英語だけでなく、お金にも愛されていなかった、というだけのことのようです。

 「お金に愛されない」のであれば、ここは開きなおって、「お金がなくても、幸せな余生をすごせる方法を検討するべきではないか?」と真剣に考えるようになってきました。



 そんなことを考えていた時に、あの「元首相暗殺事件」が発生しました。そして、今、その殺害事件の動機になったと言われる宗教団体とのトラブルと、政治家との癒着や、省庁の不透明な教団名称の変更プロセスなどが、取り沙汰されて、連日ニュースとして取り上げられています。

 私の日記(ブログ)を読んで頂いている方はご存じかもしれませんが、私、結構な頻度で、いわゆる「カルト」と呼ばれる宗教団体と対決し、独学でも調べてきました(カルトについては、後程キチンと説明します)。

 しかし、私は、これらの宗教団体を、最初から「敵」と認定して、対峙してきましたので、当然、それらの宗教団体の負の側面しか知らず、その撃退方法しかスコープに入っていませんでした(筆者のブログ1筆者のブログ2) ―― というか、カルトの正の側面など、その存在すら考えたこともないからです。

 しかし、布教にくる人間たちの、あの張り付いたような不気味な笑顔と、ゾワっとするような猫なで声を思い出すにつれ、もしかして、あの笑顔と声の中に、私の目指すべき老後の生存戦略があるのではないか、と考えるようになりました ―― いや、江端が狂い出しているわけではありません。私は本当に必死なのです。

 そもそも、人間の幸せは、定量化や計算で客観的に計測できない世界の中にある、ということは、「高校野球、プロ野球」や「サッカー」で、よく理解しています。

 ならば、宗教は、私を幸せにできるのではないか ―― 社会的信用を失っても、自己破産させられても、それでもなお、胸を張って「幸せだ!」と言い切れるような「洗脳」を、キチンと施してくれるのであれば、それが、カルト宗教だってなんだっていいじゃないか?と、思えてきたのです。

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