さて、キリスト教系のカルト宗教団体の多くは、キリスト教の根幹とも言える、この"原罪"ストーリーに、壮大なラクガキ・・・もとい、上書きを施します。これらのカルト宗教に見られる「上書き」パターンには以下のようなものがあります(というか、私が知る限り、『これしかない』という感じです)。
カルト宗教団体や、その教祖のイメージをしやすくするために、『私(江端)がカルト宗教(江端教)の教祖になった件』、という架空の話で説明を行います。
まず、教祖である私は、原作である失楽園での、「アダムとイブによるリンゴ食」のストーリーを、ヘビ(ルシファー)とイブの性交(SEX)と、さらに、イブとアダムとの性交(SEX)という、「ヘビとアダムとイヴの3P(Three persons SEX)」が実施された、という「上書き」を施します。これによって、精神的または肉体的な純潔が犯された(堕落した)という概念を挿入しました。
次に、私は、『イエス・キリストの救済は、万能ではなかった』、という「上書き」を加えます ―― といっても、イエス・キリストの働きを全面的に否定するのではなく、精神的または肉体的な純潔という2つの純潔のうち、「精神面」だけは解決してくれた、というストーリーに改ざんします。
イエス・キリストを全面否定すると、信者が集まりにくくなると考えたので、ここは、イエス・キリストを活用する方向でストーリーを作りました。
しかし、肉体的な純潔は、まだ回復されていない、という課題を残しつつ、ついに、ここに私(江端)が登場するのです。
“メシア the final” こそが、この私江端智一、偉大なる江端、『エバ・カンターレ』です。
以上をまとめますと ―― イエス・キリスト製ワクチンは、”魂(スピリッツ)の原罪”には効果はあったが、肉体(フィジカル)の原罪には、その効力が及んでいない、という、壮大なシナリオ変更をぶっこむのです。この肉体版”原罪”のワクチンとなるのが、この私、エバ・カンターレなのです。
私(江端)は、『イエス・キリストは完全な”原罪”ウイルス向けワクチンを提供していない』と、キリスト教に対する強烈なディスリスペクトをかました上で、自分(江端)こそが最終救済者(メシア the final)であると言い切ります。もちろん、これは、世界中のキリスト教徒全てにケンカを売る行為です*)。
*)ただ、世界中のカルトの教祖のほぼ全てが、「自分こそが”メシアthe final”」と主張しているので、逆に、「ありふれている」と言えるかもしれませんが。
江端教の目的が、肉体向け”原罪”に対抗するワクチン接種行為と考えるわけです。
しかし、肉体向け"原罪"の消滅は、mRNAのようなワクチン接種では実現できません。そこで、私は、AI技術の一つである、遺伝的アルゴリズム*)のアプローチ、すなわち、人為的なエリート製造戦略で、この問題の解決を試みます。
*関連記事:「抹殺する人工知能 〜 生存競争と自然淘汰で、最適解にたどりつく」
つまり、肉体向け”原罪”をうまいこと消滅できる組み合わせのカップルを作るのです。『そんなこと、どうやってできるのか』などとは、考えてはなりません。
私はたった一人で、誰にも相談せずに、この組み合わせをコンピュータと直感でデザインするのです。しかし、1組、2組程度をちんたらやっていたら、人類の救済などできません。
ですので、カップルを、数千から数万単位で同時に量産するのです。その上、私は、男女の顔写真と全身写真”だけ”で、ニューラルネットワークと、最適化アルゴリズムを使ってマッチングさせます。
私はコンピュータを使った組み合わせ問題のエキスパートでもありますので、この問題の困難性を完璧に理解しています。恐らく、完璧な量子コンピュータが開発されたとしても、この組み合わせを完成させるのには、宇宙の年齢を、宇宙の年齢分繰り返しても、全然足りないくらいの時間が必要です*)。
*)「NP困難問題」でググってみてください。
しかし、忘れてなりません。私は、最終救済者、”メシア the final”なのです。私のコンピュータの中には、神が常駐しており、私には、計算中のコンピュータから、常に神の声が聞こえてくるのです。
このように、この私は、肉体版”原罪”を消滅させうる超高度な医学的(遺伝子学)組み合わせを、写真だけを使って、膨大(という言葉では語れないくらいの膨大)な数でデザインします。
この程度のこと、”メシア the final”である私にとっては、ピース・オブ・ケーキ(朝飯前)です。
人類は、最終救済のためであれば、自由恋愛やら、出会いの場やら、合コンやら、結婚相談所やら、そのような些事(さじ)に関わっている暇はありません。
神の声を聞くことのできる唯一のメシアである私は、堕落した近代の自由恋愛結婚観を完全否定して、現実世界において、豪快かつ壮大な数の遺伝的アルゴリズムを地上で実現しなければならないという使命があるのです ―― つまり、一斉集団結婚です*)。
*)純潔を守るという名目の、「村の中のみで閉じた結婚制度」、あるいは、「一夫多妻」「一妻多夫」などのような形態でも同じ効果を得られます。
すなわち、江端教においては、肉体版"原罪"を消滅させうる手段として、一斉集団結婚は、絶対に避けて通ることができない一大イベントなのです。
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