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» 2022年07月28日 11時30分 公開

投資初心者が見つけた“黄金の組み合わせ”「お金に愛されないエンジニア」のための新行動論(5)(1/7 ページ)

2022年初頭から、“投資初心者”として、投資の勉強をひたすら続けてきました。その初心者の私に最も適した投資の方法としてたどり着いたのが、インデックス投資です。ランダムウォーク分析×現代ポートフォリオ理論という“黄金の組み合わせ”から成るものです。

[江端智一,EE Times Japan]

今回のテーマは、すばり「お金」です。定年が射程に入ってきた私が、あらためて気づいたのは、「お金がない」という現実でした。2019年には「老後2000万円問題」が物議をかもし、基礎年金問題への根本的な解決も見いだせない中、もはや最後に頼れるのは「自分」しかいません。正直、“英語に愛され”なくても生きていくことはできますが、“お金に愛されない”ことは命に関わります。本シリーズでは、“英語に愛されないエンジニア”が、本気でお金と向き合い、“お金に愛されるエンジニア”を目指します。


「経済学の勉強は、金持ちになることとは無関係である」

 このシリーズが始まってから、私は、金融工学の勉強(基本)を続けてきました。特に先月のコラムでは、金融商品のリターンやリスクの計算式を理解するために、統計や確率の計算式と格闘を続けてきました。

 そういう訳で、今回登場する、現代ポートフォリオ理論の数式を見ているうちに、私の脳内では「天空の城ラピュタ」が上映されていました。


このあと、「目が、目が〜〜〜」ってなるんですよね

 「君たち理系の学徒は、統計学の基礎も忘れてしまったのかね!? 平均と……こっちは偏差のパラメータだ!! ああ、これはリスク計算の応用だ!! 読める! 読めるぞ!!

 「……あなたは、いったい誰?」

 「ルシータ。私も、君と同じように、もう一つのタイトル(学位)を持っているのだよ。論文名『ベイズ事後確率を応用した最適ポートフォリオによる投資戦略』。私は経済学ドクター(博士) ――『文系』だ」



 昨今、「文系/理系の分類」など、「血液占い」くらい意味がないことかもしれませんが、まあ、それでも、いわゆる理系と言われる学部に在籍している学生は、数式と無関係に生きていくことは困難です。

 そういう観点で、今回のこのコラムでは、文系/理系という言葉を、意図的(悪意的)に濫用していきたいと思います。

 なぜこんな話を冒頭に持ってきたかというと、今回のコラムを執筆していて気がついたことがあったからです。現在の金融投資の理論は、大きく「(金融)工学」と「(行動経済)心理学」という、全く異なる分野の大きな2本の柱から成り立っており、しかしながら、「投資」そのものの学問は「経済学部」の範疇(はんちゅう)らしいのです。

 ところが、「経済学部」を調べてみると、どの教授も『お金の流れの仕組みを学問として教える』が、『お金の稼ぎ方までは教えない』と答えています。また、多くの経済学部の先生や生徒たちが、『いろいろな人から、投資の相談をされてウンザリしている』と言っています。

 『私の生活ぶりを見れば、”経済学の勉強が、金持ちになることとは無関係である”、ということも分からんのか!』という経済学部の教授のコメントを、これまでも多く目にしてきました。

 では、どの大学のどの学部であれば、投資(株、債券)に関する学問―― というか、はっきり言えば「お金持ちになるための勉強」を学べるのかを調べてみたのですが ―― はっきり言って、ドンピシャと思えるような大学や学部は見つけられませんでした。

 ちなみに、「金融学科」であれば、国内では、東京大、中央大、武蔵大にあり、海外であれば、カリフォルニア大学バークレー校、ニューヨーク大学タンドン校、コロンビア大学、イリノイ大学などが人気のようです。

 しかし、まあ、この手の学部の卒業生の就職先は、国内外の銀行/証券会社/保険会社などの金融業界、シンクタンク、経済産業省、アクセンチュアやマッキンゼーなどのコンサルティング会社であり、「『老後の生活資金をどうしたらいいの?』と、うろたえているエンジニア」の立ち位置とは、かなり違いがあるような気がします。

 とはいえ、私が今回のコラムの執筆準備で調べた限りでは、たとえ個人レベルの投資であったとしても、(1)数学(統計学と確率論)、(2)心理学(行動心理学)、(3)マクロ/ミクロ経済学程度の知識はあった方が良いように思えました。

 その中でも特に、(1)数学(統計学と確率論)を武器として使いやすい環境にある、私たち理系のエンジニアは、文系よりも優位にあると思います ―― 間違いなく大きなアドバンテージになるはずです。

 リスクとリターンの考え方を数学的に理解して、老後の生存戦略に挑むことのできる私たち理系は ―― いまだに、動かなくなった洗濯機やパソコンを、たたいて直そうとする、ありとあらゆるボタンを押しまくって対応しようとする文系の人間たちよりも、理性的な投資戦略が取れるはず ―― と、思いたい(文系に対する悪意ある偏見です)。

 その一方で、リーマン・ショックの時、ニュースで、リーマン・ブラザーズ本社から、段ボール箱を一つ抱えて立ち去るスーパーエリートたちの姿を見ている私としては、「ダメなときは、何をしてもダメ」という覚悟の方が大切なような気がします。それでも、「ダメ」の内容と規模は、自分でコントロールできるに越したことはありません。

お金に愛されないエンジニアのランダムウォーク

 こんにちは。江端智一です。本日は、これまでの4回の連載で、「投資ド素人」の私が、フラフラと手当たり次第、いろいろなことを調べて、ぼんやりと見えてきた、私個人の(×国家の)老後のための投資の(×国家財政の)経緯を、一度まとめてみたいと思います ―― 「お金に愛されないエンジニアのランダムウォーク」です。

 私が投資の勉強を始めたのは、今年の正月(2022年1月)に、930円(税込)のこの本をコンビニで購入してからでした。

 で、私はこの時、「なるほど、投資とはこうやってやるものなのか」と思ったものです ―― それは、間違ってはいなかったのですが、正しくもなかったのです。

 これは、世の中にある投資方法の一つである、ファンダメンタルズ分析の一手法で、「決算書」から会社の業績を読み取り、「適正な株価を予想する」というアプローチの一つだったのです。

 過去4回の「お金に愛されないエンジニアのランダムウォーク」から、私は「世の中にある投資手法は、ざっくり4つ」と見ています。

 これらの4つの概要を、私なりの言葉で語ってみます。

 (A)のテクニカル分析は、「ミサイルの軌道計算を行い、目標地点でミサイルを迎撃する」というイメージです。変動し続ける株価を追尾して、目的の値段で売買するというもので、“コンピュータの前でグラフをにらみつけ、売買を繰り返すトレーダー”をイメージしていただければOKです。

 比して、(B)のファンタメンタルズ分析は、さまざまなデータ(前述の決算書を含む)をかき集めて、株価の「真の価格」を推定するものです。で、「真の価格」より安ければ買い、高ければ売るというものです。これは、市場の『投資家たちの多くが、間違った株価の評価をしている』、かつ『自分だけは正確な評価ができる』という前提に立つものです。

 (C)のアノマリー分析とは、まあ、これまでの投資の観測結果に元づく経験則によるもので、『理由は分からないけど、そういうものなの!』を、投資戦略に取り込む手法、と理解して頂ければ十分です。

 これに対して、(D)のランダムウォーク分析は、上記(A)(B)(C)を豪快に否定するものです。「株価の動きなんぞ分かる訳ない」と決めつけた上に、「そもそも、正しい株価なんぞは存在しない」という考えに基づく投資方法です。今回のコラムのメインは「そんな投資方法があるのか?」という疑問に答えるものになると思います。

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