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不況期に向かう今、日本の半導体産業の「あるべき姿」を考える大山聡の業界スコープ(57)(2/2 ページ)

» 2022年09月14日 10時30分 公開
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現実的に実行するために

 半導体産業の中心にあるべき企業は、通常なら半導体メーカーなのだが、残念ながら日本の半導体産業において、そのようなフォーメーションは現実的ではない。筆者としては、以下のようなフォーメーションを勝手に考えてみた。

【1】電子部品メーカーを主体としたフォーメーション
 日本電産、村田製作所など、世界で存在感の強い部品メーカーに半導体技術や事業を積極的に取り込んでもらい、強力な部品事業とシナジーを期待できる半導体事業を育成させる。国内に分散している小規模な半導体メーカー各社は、M&Aなどによって部品メーカーに吸収されるような、現実的なシナリオを検討する。

【2】半導体製造装置メーカーを主体としたフォーメーション
 東京エレクトロンのような、世界で存在感の強い装置メーカーとシナジーを発揮できるような半導体技術を育成し、装置メーカーの資本的サポートなどを受けながら独立を目指す企業を育成する。半導体製造技術については、十分な設備投資ができる日系企業が非常に少ないため、有力な装置メーカーとの連携を重要視する必要がある。

【3】機器メーカーのシステムノウハウをベースにファブレスを育成するフォーメーション
 世界のエレクトロニクス業界が発展してきた背景には、最初は何らかの機能を実現する箱(システム)から始まり、その機能を集積することによってボードの形状に小型化され、さらなる集積によって半導体の形状に小型化される、という事例が多く存在する。機器メーカー各社が保有するシステムやソフトウェアのノウハウを半導体にまで落とし込む作業にインセンティブを与えることで、日本国内にもユニークなファブレス企業が誕生しやすい環境を整備する。

 特に深い思慮もなく、勝手な考えを述べただけなので、どれも突っ込みどころが満載であることは百も承知だ。ただ「現実的に実行するなら」という条件で考えると、選択肢はそんなに多くないのが現状だろう。むしろ、上述の筆者のアイデアにいろいろと突っ込みを入れていただくことで、より現実的なアイデアが形成されるのであれば、非常にありがたいことである。日本の半導体産業の「あるべき姿」は、理想論も大事だが、現実的でなければ意味がない。特にこれから半導体業界が不況に突入しようとする今のようなタイミングを大事にしながら、このような議論を多く重ねたいものである。

求められる辣腕

 話は脱線するが、昨今では電通OBでコンサル会社を経営している某氏が、東京オリンピックのスポンサー選定に関与して不当な金銭のやり取りがあったのではないか、という疑惑の容疑者として注目されている。不正が事実であれば、某氏の行動は許されることではないが、スポーツ業界における興業、イベントを実行する上では大変な実績を残している人物でもあるようだ。批判を恐れずに申し上げれば、半導体業界にもこのような辣腕(らつわん)を奮ってくれる人物が必要なのではないか。現場を動かせる原動力が不可欠なのではないか、などと考えてしまうのである。

筆者プロフィール

大山 聡(おおやま さとる)グロスバーグ合同会社 代表

 慶應義塾大学大学院にて管理工学を専攻し、工学修士号を取得。1985年に東京エレクトロン入社。セールスエンジニアを歴任し、1992年にデータクエスト(現ガートナー)に入社、半導体産業分析部でシニア・インダストリ・アナリストを歴任。

 1996年にBZW証券(現バークレイズ証券)に入社、証券アナリストとして日立製作所、東芝、三菱電機、NEC、富士通、ニコン、アドバンテスト、東京エレクトロン、ソニー、パナソニック、シャープ、三洋電機などの調査・分析を担当。1997年にABNアムロ証券に入社、2001年にはリーマンブラザーズ証券に入社、やはり証券アナリストとして上述企業の調査・分析を継続。1999年、2000年には産業エレクトロニクス部門の日経アナリストランキング4位にランクされた。2004年に富士通に入社、電子デバイス部門・経営戦略室・主席部長として、半導体部門の分社化などに関与した。

 2010年にアイサプライ(現Omdia)に入社、半導体および二次電池の調査・分析を担当した。

 2017年に調査およびコンサルティングを主務とするグロスバーグ合同会社を設立、現在に至る。


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