光スペクトルを使用してデータの伝送/受信を行う高速通信「Li-Fi(Light Fidelity)」は、現在まだ初期段階にあるが、米軍がその成長に拍車を掛けている。Li-Fi大手のpureLiFiとSignifyの2社は、米国陸海軍との間で重要な契約を締結し、既存の通信システムにセキュリティレイヤーを追加することによって性能向上を実現していくという。
光スペクトルを使用してデータの伝送/受信を行う高速通信「Li-Fi(Light Fidelity)」は、現在まだ初期段階にあるが、米軍がその成長に拍車を掛けている。Li-Fi大手のpureLiFiとSignifyの2社は、米国陸海軍との間で重要な契約を締結し、既存の通信システムにセキュリティレイヤーを追加することによって性能向上を実現していくという。
同時に、Li-Fi市場のさまざまなメーカーが現在、マスマーケットへの進出を目指しているところだ。
Li-Fiはもともと、エディンバラ大学の教授であるHarald Haas氏が2011年に発明した技術だ。可視光通信(VLC:Visible Light Communication)技術は、LEDライトの光を利用して、ホットスポットやノートPC、スマートフォンなどに搭載可能なレシーバーにデータを伝送する。そしてトランスミッターが、赤外線を使ってLEDライトに信号を送り返す。
最大データ伝送速度に関しては、Wi-Fi 6が9.6Gビット/秒(bps)であるのに対し、Li-Fiはそれをはるかに上回る220Gbpsを達成可能だという。しかし通信範囲は、Wi-Fiの30mに対して、Li-Fiはわずか10mしかない。さらに、Li-Fiの光は、壁を通過することはできない。
Li-Fiは、このような欠点があるにもかかわらず、軍事用途向けとして大きな期待を集めている。それは、高速かつセキュアなLEDベースのネットワークは、特定エリアで展開でき、ごく一般的なRFツールによってハッキングされる危険性もないためだ。
pureLiFiのCEO(最高経営責任者)であるAlistair Banham氏は、米国EE Timesの取材に応じ、「われわれは米陸軍との間で、数百万米ドル規模の契約を2件締結している。米陸軍は、Li-Fi技術を活用することによりセキュリティ認証を行うだけでなく、使い勝手の良さや配備の簡素化、信頼性の向上など、さまざまな側面についても注目している」と述べる。Li-Fiの発明者であるHaas氏は、このpureLiFiの共同創設者でもある。
また、もう1つの大手Li-Fi企業であるSignifyも2022年5月、米海軍が同社製品を使用して、戦術作戦司令部(TOC:Tactical Operations Center)のセキュリティを確保していく予定であることを発表した。
Signifyで公共交通機関部門担当グローバルセグメントリーダーを務めるMark Gunther氏は、EE Timesのインタビューに応じ、「SignifyのTruLi-Fiソリューションは、米国の軍事組織が、重要なセキュリティレイヤーを追加することによって、既存の通信システムの拡張/向上を実現するための手法を提供する」と述べる。
「つまり、赤外線のエリア外では妨害、盗聴、追跡される可能性がなくなるということだ」(Gunther氏)
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