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NICTら、15モード多重信号の光スイッチングに成功Beyond 5G以降の通信技術を支える

情報通信研究機構(NICT)の研究グループは、実環境テストベッドを利用した実験をラクイラ大学らと共同で行い、「15モード多重信号の光スイッチング」に成功した。「Beyond 5G」以降の情報通信サービスを支える技術として注目される。

» 2022年09月27日 09時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

実環境テストベッドを利用した実験で初めて実証

 情報通信研究機構(NICT)の研究グループは2022年9月、実環境テストベッドを利用した実験をラクイラ大学らと共同で行い、「15モード多重信号の光スイッチング」に成功したと発表した。「Beyond 5G」以降の情報通信サービスを支える技術として注目される。

 実験室環境でモード多重通信の光スイッチングに関する研究/実証はこれまで、10モード以下に限られていたという。今回は、15モード多重通信用に試作した「光スイッチ」や「送受信器」を用意し、一周が6.1kmの標準外径「15モード光ファイバー」などを、イタリア・ラクイラ市内の実環境テストベッドに敷設した。

イタリア・ラクイラ市内の実環境テストベッドに構築した15モード多重光ネットワークのイメージ(上図)とその構成(下図) 出所:NICT

 15モード送信器は、6台の外部共振器レーザーを用い、偏波多重IQ変調器により6波長多重の偏波多重16QAM信号(50Gbaud)を生成できる。これを15分岐させ、15モード多重(分離)器(MPLC)に通すことで、15モード多重信号(30Tビット/秒=5Tビット/秒×6波長)を生成させる。

 15モード受信器は、入力部に15モード分離器を備え、モード分離をされた3モード(群)ごとに処理を行う。処理する波長は波長選択フィルターで選択し、コヒーレント受信器で受信した後に、デジタル信号処理(MIMO)を行い復調する。

 15モード光スイッチは、市販されている4×16波長選択スイッチを3台用いた。制御プログラムを改良し、15台の2×2の波長クロスコネクト(WXC)として構成した。これによって、経路を隣接ノード(通過)または、自ノード(分岐)に切り替えられるという。

 この時、通過する波長は、出力部の15モード多重器で15モード多重信号に変換され、15モード光ファイバーを通して隣接ノードへ送信される。分岐する波長は自ノードで処理されることになる。

 この光ネットワークを用いて、48.8km(8周回)までの伝送を実証した。さらに、15モード多重信号について、波長ごとの光スイッチング実験にも成功した。具体的には、6波長・15モード多重信号(30Tビット/秒)を生成させ、実環境テストベッドを一周した後に、光スイッチでモード多重信号の経路を波長ごとに切り替えた。そして、「全波長の挿入・分岐」「全波長の通過」「一部波長の通過・挿入・分岐」という、光スイッチングの代表的な3パターンを評価した。

 この結果、光スイッチング後に、モード多重信号が正しく受信できていることを確認したという。モード多重通信は、モード間干渉を補償するため、受信器側でデジタル信号処理が必要となる。しかし、今回用いた標準外径マルチモード光ファイバーは、拡張性に優れており、高密度な大容量ネットワークを安価に導入できる可能性が高いという。

15モード光スイッチの動作実証パターン(上図)と各光スイッチング後の受信信号品質(下図) 出所:NICT

 今回の実験は、NICTネットワーク研究所のソアレス・ルイス・ルーベン主任研究員らによるグループと、ラクイラ大学(イタリア)、フラウンホーファー研究所、ハインリッヒ・ヘルツ研究所(ドイツ)、フィニサー(オーストラリア)、プリズミアングループ(イタリア、オランダ、フランス)および、ベル研究所が共同で行った。

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