情報通信研究機構(NICT)は、標準外径(0.125mm)で51.7km長の4コア光ファイバーを用い、波長多重技術と複数の光増幅方式を駆使した伝送システムにおいて、毎秒1ペタ(P)ビットを超える大容量伝送の実験に成功した。
情報通信研究機構(NICT)ネットワーク研究所のベンジャミン パットナム主任研究員らによるグループは2022年5月、標準外径(0.125mm)で51.7km長の4コア光ファイバーを用い、波長多重技術と複数の光増幅方式を駆使した伝送システムにおいて、毎秒1ペタ(P)ビットを超える大容量伝送の実験に成功したと発表した。
NICTはこれまで、一般に商用化されていないS帯と呼ばれる波長帯域の一部を用いて伝送実験を行ってきた。今回は、S帯用のラマン増幅を広帯域化することで、C帯やL帯といった商用帯域と合わせ、20テラ(T)Hzの周波数帯域を利用可能とし、合計801波長を用いることにした。さらに、全周波数帯域で情報密度が高い256QAM変調方式を採用した。
開発した伝送システムによる実験概要はこうだ。まず、多波長光源で801の異なる波長をもつレーザー光を一括して生成する。そして、多波長光に偏波多重256QAM変調を行い、遅延を付けて擬似的に異なる信号系列とした。これらの信号系列を4コア光ファイバーの各コアに入射させた。
入射された信号は、51.7km長の4コア光ファイバーを伝搬。信号の伝送損失はラマン増幅で補償するため、結合器を用いて必要な励起光を4コア光ファイバーに入射。それぞれ受信した各コアの信号について、伝送誤りを測定した。
研究グループは、開発した伝送システムの伝送能力(データレート)を最大化するために、さまざまな符号化を適用しながら検証を行った。この結果、適切な誤り訂正を行うことで、4コア、全波長合計のデータレートが毎秒1Pビットに達したという。
なお、コアごとに各波長のデータレートは、最大で毎秒約340Gビット、全波長合計で1コア当たり毎秒約250Tビットになったという。
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