また同氏は、「米国はいずれ、Chip 4同盟が中国に対して海外の半導体技術へのアクセスを制限する範囲を、緩和する必要に迫られるだろう」と指摘する。
「日本と韓国、台湾の中国経済への依存度や、もしChip 4同盟が実質的な措置を講じた場合に中国が高圧的な経済報復に出る可能性などを考えると、米国の視点から見て、中国に対して半導体へのアクセスを制限することが効果的な手段になるとは思えない」(Bey氏)
米中間の技術戦争は、トランプ前政権から始まり、バイデン政権においてさらに激化している。
また、「CHIPS法(正式名称:CHIPS and Science Act)」が新たに策定されたことにより、SamsungやSK hynix、Intel、TSMCなどの半導体メーカーは、中国国内の既存の製造拠点を拡充するにあたって制約を受けることになる。
さらに最近、米商務省(DOC)は、最先端の半導体製造技術の世界輸出に関する新たな規制措置を発表した。これにより、AlibabaやBaiduなどの中国の半導体設計メーカーとの関係が悪化する可能性があるとみられている。
またBey氏によると、Chip 4同盟の設立によってさらなる規制が講じられることにより、メリットがリスクと相殺されてしまう可能性があるという。
「米国にとって効果的な点としては、中国の半導体メーカーを、日本と韓国、台湾に対して数世代の後れを取っている状態に確実に維持できるということや、軍事関連分野などの最も注意を要する中国バイヤーに対し、最先端のAI/処理チップへのアクセスを阻止することができるといった点がある。一方、最も重大な損失としては、イノベーションの抑制や、業界におけるコストの増大、中国による経済報復の引き金を引いてしまう可能性があることなどが挙げられる」(Bey氏)
またBey氏は、「米国は、中国に対して競争上の優位性を確保できている間は、さらなる規制措置を進めていくだろう。中国は、米国に対して報復措置を講じることに乗り気ではない。米国の輸出規制および制裁措置は、半導体業界に強大な力を及ぼす。米国の金融システムは世界中を網羅している上、半導体業界では米国のメーカーや技術、IP(intellectual property)などの優位性が確立されていることから、ほとんどの半導体関連アプリケーションが米国の輸出規制の対象となるためだ」と付け加えた。
台湾政府に助言を行うシンクタンクChung-Hua Institute for Economic Researchの副所長、Roy Lee氏も、「Chip 4同盟の重要な要素は、中国の封じ込めだ」と語る。
「Chip 4は、半導体不足の問題や投資審査案件なども取りまとめており、技術/人材獲得に向けた中国の戦略について、情報を共有している。特に、中国がASMLの装置を手に入れるための抜け道があるかどうか――。それがChip 4同盟の焦点になるだろう」(同氏)
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.