Intelは、米国をホームコートとして地の利を得ているが、半導体パッケージングやIC基板などの面ではアジアを頼みの綱にしている。そこでIFSは、このようなサプライチェーンの脆弱性を低減すべく、パッケージング事業の一部を米国アリゾナ州チャンドラーの製造拠点に移す考えだという。
Thakur氏は、「当社は、基板を製造している18の工場において、約6社のパッケージング企業を活用している。われわれは自社で技術を保有/開発しており、製造方法についても把握している。そのため、場合によっては、アリゾナでの製造を行うことを考えている」と述べる。
ただし同氏は、アリゾナ州への移行時期については明らかにしなかった。
現在、IFSはファウンドリーの顧客に対して、Intelのさまざまな工場やその他の製造オペレーションのキャパシティーを使用している。
IFSは、スマートフォン向けチップにおける世界最大の設計者であるMediaTekのために、“生産回廊(production corridor)”を構築した。
Thakur氏は、「その生産回廊では、1週当たり数千枚のウエハーを生産している。母体であるIntelからの受注が急増してたとしても、誰もMediaTek専用の生産能力には手が出せない」と述べる。IFSの広報担当者であるJason Gorss氏によると、IFSは顧客のために新たな生産能力回廊を整備しているという。
Thakur氏は、偽造チップや違法に再度パッケージングなど、ファウンドリーの顧客が国際的に直面している多くのサプライチェーンの問題についても指摘した。
Intelはパッケージングについても、マレーシアにある前述のようなアジアの施設に依存している。Thakur氏は、「(同施設でも)安全性は確保されているが、今後、防衛事業では、チャンドラーがパッケージングの新しい拠点になるだろう」と語った。
半導体業界では、米国と中国が地政学的な争いをしているが、IFSはどの国でも顧客を求めていく。米国は、中国へのチップ技術の輸出について新たな規制を発表すると予想されているが、Thakur氏は、Intelの事業において中国向けが約20%を占めていることを指摘する。
「このような状況は、なかなか厄介だ。われわれは、地政学的な不確実性が高まっている環境下で事業を展開している。IFSは、ファウンドリー事業において大手企業と競争しなければならない」(同氏)
サプライチェーンの自国回帰が進む中、国内市場へのサービス提供が鍵となる。
「顧客はどこにいてもいい。問題になるのは、いつ現地で製造し、サービスを提供するかということだ」(同氏)
Thakur氏は、「IFSは、TSMCとSamsungが圧倒的シェアを誇るファウンドリー事業の後発企業として、差別化する方法を見つけなければならない」と述べる。
同氏は、x86、Arm、RISC-Vなどのアーキテクチャ、パッケージングプロセス、さらにはチップレットの使用を加速する「Intel Chiplet Studio Suite」などを取り上げ、Intelの専門性を強くアピールした。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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