そして今回は、第2章第1節「科学技術・イノベーションに係る国内外の動き」から、概要をご紹介する。この節は、第1項(2.1.1)「日本政府の取り組み」と第2項(2.1.2)「海外の取り組み」で構成される。第1項「日本政府の取り組み」は、科学技術政策の枠組み「科学技術・イノベーション基本計画」をベースにしている。内閣府はこの基本計画を1996年度(1996年4月〜1997年3月)から、5年間を1つの期として改定してきた。最新の基本計画は2021年度(2021年4月)に始まった第6期である。
第2章第1節「科学技術・イノベーションに係る国内外の動き」と第2章第2節「電子機器群の分類と定義」の詳しい目次[クリックで拡大] 出所:JEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会(2022年7月7日に開催された完成報告会のスライド)
「科学技術・イノベーション基本計画」における取り組みの推移。科学技術関連予算の拡充(第1期〜第3期)から始まり、課題達成の重視(第4期)、目指すべき社会像(第5期以降)へと重点を変化させてきた[クリックで拡大] 出所:JEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会(2022年7月7日に開催された完成報告会のスライド)第6期を内閣府は、第5期で提言した「社会のあるべき姿(Society 5.0(超スマート社会))」(参考)を実現する期と位置付けた。相対的な研究力の低下、新型コロナウイルス感染症の拡大、科学技術・イノベーションを中核とする国家間の覇権争いの激化、地球温暖化に伴う気候危機の重大化といった現状を踏まえ、「国民の安全と安心を確保する持続可能で強靭な社会」と「一人ひとりの多様な幸せを実現できる社会」を構築することを目指す。
第2項(2.1.2)「海外の取り組み」から主要な外国と日本を比較すると、日本の置かれた状況はかなり厳しい。2000年以降、中国が研究開発費用を急速に伸ばしており、2009年には日本を抜き、2015年にはEU全体を抜いた。米国に迫りつつある勢いである。米国も2010年代後半からは、研究開発費用を急速に拡大している。EUも研究開発に投じる金額を堅実に伸ばしてきた。
主要国の研究開発予算推移(OECDの推計)。企業や大学、政府機関などが投じた研究開発の総額。なお縦軸は10億米ドルではなく、100万米ドルだとみられる[クリックで拡大] 出所:JEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会(2022年7月7日に開催された完成報告会のスライド)一方、日本は2007年以降、研究開発に投じる金額が伸びていない。横ばいである。その結果、2019年には米国の4分の1、中国の3分の1、EUの2分の1にまで相対的な金額が減少してしまった。日本の研究開発が難しいかじ取りを迫られる中、ロードマップの重要性が一段と高まっているといえよう。
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