今回から、「IEDM 2021」でオランダimec Holst Centreでシニアリサーチャー、オランダEindhoven University of TechnologyでフルプロフェッサーをつとめるHubregt J. Visser氏が講演した「Practical Implementation of Wireless Power Transfer(ワイヤレス電力伝送の実用的な実装)」の内容を紹介する。
半導体のデバイス技術とプロセス技術に関する世界最大の国際学会「IEDM(International Electron Devices Meeting)」が昨年(2021年)12月11日〜15日に米国カリフォルニア州サンフランシスコで開催された。同年12月17日以降は、インターネットを通じてオンデマンドで録画済みの講演ビデオを視聴可能になった。
IEDMは11日に「チュートリアル」、12日に「ショートコース」と呼ぶ技術講座をプレイベントとして実施し、13日〜15日にメインイベントの技術講演会(テクニカルカンファレンス)を開催した。「ショートコース」は、2つの共通テーマに基づく複数の講演で構成する。共通テーマの1つは「Future Scaling and Integration Technology(未来のスケーリングと集積化の技術)」、もう1つは「Emerging Technologies for Low Power Edge Computing(低消費エッジコンピューティングに向けた将来技術)」である。
後者を構成する6件の講演の中で、「Practical Implementation of Wireless Power Transfer(ワイヤレス電力伝送の実用的な実装)」が極めて興味深かった。講演者はオランダimec Holst Centreでシニアリサーチャー、オランダEindhoven University of TechnologyでフルプロフェッサーをつとめるHubregt J. Visser氏である。
そこで本講演の概要を今回から、シリーズでお届けする。なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者のご理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。
Visser氏の講演ではタイトルの次に、アウトラインが示された。直訳すると「1. はじめに」「2. 誘導型ワイヤレス電力伝送」「3. 放射型ワイヤレス電力伝送の歴史(黎明期)」「4. 放射型ワイヤレス電力伝送の歴史(現代)」「5. 放射型ワイヤレス電力伝送の基礎」「6. レクティナ」「7. 放射型ワイヤレス電力伝送の応用例」「8. 将来への展望」 となる。全体としては近接した短距離の電力伝送よりも、中長距離の電力伝送を意識した内容となっている。
Visser氏は、「電力収穫(パワーハーベスティング)」の一部が「ワイヤレス電力伝送(WPT:Wireless Power Transfer)」だと指摘する。「電力収穫」または「エネルギーハーベスティング」とも呼ばれる技術は、動き(回転)や圧力、熱、光などを電気エネルギーに変換する。そしてワイヤレス電力伝送(WPT)は、高周波電力(RF Power)を収穫する技術だと述べていた。
ワイヤレス電力伝送(WPT)の原理は、大別すると2つに分かれる。1つは「誘導(Inductive)型」WPTである。2つのコイルを近接させて電磁誘導によって高周波電力を相対するコイルに伝送する。もう1つは「放射(Radiative)型」WPTである。アンテナから高周波電力を放射し、相対するアンテナが電力を受信する。
実際には、上記2つ以外にもさまざまなWPT技術が存在する。詳しくは次回以降に説明したい。
⇒「福田昭のデバイス通信」連載バックナンバー一覧
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.