以下は、EE TimesによるUppal氏へのインタビュー内容である。
――カンファレンスでは、ネットワーク管理と電力消費量についてお伺いしましたが、その詳細をご説明いただけますか。
Sanjay Uppal氏 電力消費量全体を見ると、情報通信技術(ICT)は全部門の中で、最も急速な成長を遂げている分野であることが分かる。過去10年間で200%を超える成長率で伸びている。
現在では、ICTの観点から電力消費量を削減するための取り組みが進められているが、その主な分野としては、「データセンター」「エンドポイント」「データセンター・エンドポイント間」の3つが挙げられる。
まず、1つ目の分野であるデータセンターでは、現在、仮想化によってワークロードが統合されているため、ハードウェアのより効率的な使用が可能だ。これは、エッジ上で動作するハードウェアにも適用されるため、例えばセルサイトや工場の生産現場、支社などでも、ワークロードを統合することができる。
またエンドポイントに関しては、電気通信事業者が現在、家庭向けとして注目しているのが、デバイスの使用・非使用に応じて、その電源をインテリジェントにオン/オフできるようにするための方法である。あるフランスの電気通信事業者は、顧客の自宅に設置されているセットトップボックスやケーブルモデムが使われていない時に、インテリジェントにオン/オフできるようにしていく予定だという。
そしてネットワークの面では、無線アクセスネットワーク(RAN)の場合、セルサイトがどの程度ダイナミックに使用されているかに応じて、特定のスペクトル帯のオン/オフを切り替えることができる。「RANインテリジェントコントローラー(RIC)」と呼ばれるソフトウェアのアブストラクション層は、無線を制御することができるため、さまざまな種類の制御を実行することが可能だ。当社のパートナー企業の1社であるCohereは、RAM上でスペクトル効率化を実現しているため、われわれはRICの最上部にCohereのソフトウェアを統合した。当社はこれまでに、オペレーター各社との間で3つのトライアルを実行し、30〜60%のスペクトル効率化を達成している。
――そのように改善の可能性が見込まれるのは素晴らしいですが、あらゆる場所で実現できるようになるまでにはまだ時間がかかりそうです。一方で現在、特に欧州においてエネルギー危機が発生していることから、電気通信分野に対して今後どのようなことが期待できるとお考えですか。
Uppal氏 欧州では今冬、ネットワークの一部がダウンするとみられる。というのは、数多くの通信事業者が、「一部の電力会社が政府に対して、『ネットワーク接続を維持すべきか、それとも家庭用電力を維持すべきか」と問い合わせをしているようだ』と話しているからだ。
あらゆる分野において電力が不足するとみられるため、スペクトル効率が向上すれば、ネットワークの消費電力量が減少して、稼働時間を延ばせるようになるだろう。
しかし、こうした取り組みは、明日にでも対応できるような手っ取り早い解決策ではないため、実現にはまだ時間がかかるだろう。エネルギー不足は今後も確実に続くとみられる。現在は欧州だけの問題かもしれないが、今後、確実に取り組みが必要とされる世界的な問題となるだろう。情報技術を選択する上で、エネルギー消費量を重要要素の一つにすることが、今後ますます重要になるとみられる。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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