東京工業大学は、Beyond 5G端末機に向けた「マルチバンドフェーズドアレイ受信IC」を開発した。新たに提案した高周波選択技術を採用したことで、24G〜71GHzというミリ波帯の全バンドに、1チップで対応することができるという。
東京工業大学工学院電気電子系の岡田健一教授らは2023年1月、Beyond 5G端末機に向けた「マルチバンドフェーズドアレイ受信IC」を開発したと発表した。新たに提案した高周波選択技術を採用したことで、24G〜71GHzというミリ波帯の全バンドに、1チップで対応することができるという。
新たに提案した高周波選択技術は、帯域が狭い多位相発振器を用いる。発振器出力を3つに分け、それぞれの位相を変化させたうえで最適な組み合わせを行い合成する。これによって、発信出力の「基本波」と「2倍高調波」および、「3倍高調波」の強調モードを切り替えられるようにした。
必要に応じてこれを切り替えれば、大規模な広帯域発振器と同じ機能を持たせることができるという。局部発振器の帯域を狭くすることで、発振器回路の電力消費を大幅に削減することが可能となる。さらに、マルチモード低雑音増幅器を組み合わせれば、必要となるバンドを選択できる構成とした。モードを切り替えることで、低雑音増幅器の消費電力も低減することができるという。
今回の研究では、最小配線半ピッチ65nmのシリコンCMOSプロセスを用い、マルチバンドフェーズドアレイ受信ICを試作した。このICは、24.25G〜71GHzの広帯域で動作し、5G NR FR2の全ての割当帯域に対応するという。400MHz標準準拠の5G NR変調信号を256QAMでサポートする。チャネルごとの消費電力はそれぞれ、28GHz帯域で36mW、39GHz帯域で32mW、47.2GHz帯域で51mW、60.1GHz帯域で75mWとわずかであった。
新たに開発したマルチバンドフェーズドアレイ受信ICの回路規模と帯域を、従来品と比べた。この結果、回路規模を抑えつつ広帯域動作を実現した。特に、広帯域の動作をわずか36〜75mWという低消費電力で実行できることが分かった。
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