図4に、2017年1月から2022年12月までの月次の国内クルマ生産台数を示す。クルマの生産台数には季節性の要因があるようで、年間の生産台数約970万台で安定していたコロナ前の2017〜2019年でも上下動が激しい。しかし、コロナ禍の2020年5月頃に大きな減産となり、同年9月頃にいったん持ち直すが、2021年に入ると再び減産となっている。そして、激しく上下動しながら次第に生産台数が減少していくように見える。
2020年5月頃の大きな減産は、コロナによってクルマ需要が“蒸発”したことによるものである。コロナの感染が拡大し、「クルマを買うどころではない」という心理状態となり、クルマの需要が大きく落ち込んだのだろう。一方、2021年1月以降の減産は、半導体不足によるものと思われる。
ここで、季節性の変動要因を除外するために、コロナ前の2017年1月から2019年12月までについて毎月の平均台数を計算し(以下、「平均台数」という)、コロナ後の2020年1月以降の生産台数との比較を行った(図5の上段)。そして、コロナ後の2020年1月以降について、平均台数との差を算出した(図5の下段)。
その結果、2020年の減産台数は、2〜3月が8〜9万台以上、4〜6月が30〜40万台以上、7〜8月が10万台以上であることが分かった。この減産は、9〜10月にかけてほぼ解消され、ほぼ平均台数に戻っている。
しかし、2020年11月から再び減産に陥り、2021年に入っても平均台数に回復することは一度もなく、2月に15万台、5月に23万台、9月に40万台とクルマの減産は深刻化する。そして2022年に入ると、減産は常態化し、「10万台以上の減産」は当たり前になっていく。
では、なぜ、2021年以降、延々とクルマの減産が続いているのか? このクルマの減産の原因が半導体不足によるものであると思われる。ただし、「半導体不足」と言っても、その中身が2021年から2022年にかけて変わってきている。その概要を以下に示す。
図6に、半導体の種類や半導体企業形態毎の需給バランスの調査結果を示す。この図で、車載半導体に注目してみよう。
コロナ禍でクルマの需要が“蒸発”した2020年第2四半期(Q2)と第3四半期(Q3)は、車載半導体が「過剰」だった。クルマが売れないわけだから、車載半導体は市場に溢れかえっていたわけだ。
ところが、その車載半導体は、2020年Q4に「逼迫」し、2021年Q1以降は「不足」する。ここで、2021年Q1とQ2の「不足」は、TSMCなどのファウンドリーに起因したものであることが分かる。しかし、ファウンドリー起因の「不足」は2021年前半で解消し、同年Q3以降は「バランス」となり、2022年Q2には「過剰」となっている。
では、2021年Q3以降の車載半導体の「不足」は何かというと、パワー&アナログ半導体であることが読み取れる。そして、これらは、ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)などの垂直統合型が生産するレガシーな半導体であり、TSMCなどに生産委託する先端半導体ではないことが分かる。
ここからは、まず2021年Q1とQ2における、TSMCなどのファウンドリー起因の車載半導体「不足」について説明する。
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