STMicroelectronicsは、既存のオフライン版と並行して、機械学習開発環境「STM32Cube.AI」のクラウド版を発表した。同社は、クラウドアクセス可能なテスト用マイコンボードも提供するという。
STMicroelectronics(以下、ST)は、既存のオフライン版と並行して、機械学習開発環境「STM32Cube.AI」のクラウド版を発表した。同社は、クラウドアクセス可能なテスト用マイコンボードも提供するという。
どちらも、TensorFlowやPyTorch、ONNXファイルから、STの汎用32ビットマイコン「STM32」ファミリー用に最適化されたCコードを生成する。クラウド版は、ダウンロード版と同じコアツールを使用しているが、STの学習可能な深層学習モデルおよびデモリポジトリである「STM32 Model zoo」とのインタフェースが追加されるため、クラウド接続されたSTボード上でモデルをリモートで実行して、さまざまなハードウェアで性能をテストできる。
STのAI(人工知能)製品マーケティングマネジャーを務めるVincent Richard氏は、米国EE Timesに対し、「AIコミュニティー、特にオンラインのサービスやプラットフォームでの開発に慣れているデータサイエンティストやAI開発者という新しいカテゴリーのユーザーに対応したいと考えている。それが開発者クラウドの狙いだ。ダウンロードは不要で、インタフェースに直接アクセスして開発とテストを開始できる」と語った。
STは、ユーザーがオフライン版からクラウド版へ移行することを期待はしていない。ダウンロード/インストール版のSTM32Cube.AIは、周辺機器の定義など、他のタスクにSTの開発環境を既に使用している組み込み開発者に非常に適合しているためだ。Richard氏は、「他のツールを使用しているデータサイエンティストやAIコミュニティーに、多くの潜在的ユーザーがいると考えている」と述べている。
同氏は、「当社は、ハードウェアへのデータサイエンスやAI機能の搭載が進むことを望んでいる。それを実現する方法は、当社のツールをデータサイエンティストやAI開発者の開発方法に合わせることだ」と付け加えた。
STM32 Model zooには現在、STM32マイコンに最適化された、人の動作検知や画像分類、物体検出、オーディオイベント検出などのサンプルモデルが含まれている。開発者は、これらのモデルを出発点として、独自のアプリケーション開発ができる。
新しいボードファームでは、さまざまなSTM32マイコン上で直接、最適化されたモデルの性能をリモートで測定できる。
Richard 氏は、「AIをテストするために大量のSTM32ボードを購入する必要はない。コードはSTボードファーム上で物理的に実行されるため、リモートでテストを実行できる。異なるボードで推論を行う際の、実際のレイテンシ(遅延)やメモリフットプリントの測定値を取得できる」と説明している。
Richard氏によると、ボードファームはSTM32マイコンの各品種に対応した10枚のボードから利用可能になり、今後数カ月かけて増やしていく予定だという。これらのボードは、安定した安全なサービスを保証するために、STのインフラとは別の複数の場所に配置されるという。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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