図2に、MPU、DRAM、NANDの出荷額の年次推移を示す。MPUは2022年に過去最高の602億米ドルを出荷した。一方、DRAMとNANDは、どちらも2021年から2022年にかけて落ち込んでいる。
まずDRAMは、2021年の930億米ドルから、2022年には16%減少して778億米ドルになった。また、NANDは2021年に、2018年のメモリバブルのピークを超えて過去最高の560億米ドルを出荷したが、2022年にDRAMと同様に16%減少して471億米ドルになった。
この図2を見る限りでは、DRAMとNANDがどちらも16%減少しているが、MPUは過去最高を記録して順調に成長していると言える。従って、それほどひどいことになっているとは思えない。
ところが、同じWSTSのデータを使って、四半期の出荷額の推移をグラフにしてみると、違った景色が見えてくるのである。
図3に、MPU、DRAM、NANDの四半期の出荷額を示す。一目見て、「うわあ!」と叫んでしまった。2022年後半に、3種類全ての半導体の出荷額が急降下しているからである。年次推移では成長していたはずのMPUまで急減少していることに驚いてしまった。
図4は、2015年Q1から2022年Q4までをクローズアップしたグラフである。まず、2021年Q3に257億米ドルだったDRAMは2022年Q4に49%の127億米ドルまで落ち込んだ。次に、2021年Q4に153億米ドルだったNANDは1年後に、55%の84億米ドルまで減少した。
そして、年次推移では成長していたはずのMPUは、2022年Q3に四半期としては過去最高の184億米ドルを記録したにもかかわらず、そのわずか3カ月後の同年Q4に40%減少して113億米ドルに急降下した。
DRAMが1年強で半分以下の49%に、NANDが1年で55%に、MPUはたった3カ月で40%減少した。これほどひどい出荷額の低下は、過去に見たことがない。
ここまでは、2022年12月までのWSTSのデータに基づく分析である。そして、WSTSは2カ月前までのデータをリリースする。従って筆者の手元には、2023年1月までのWSTSのデータがある。
まさか、2022年12月からの1カ月後で、上記の事態が大きく変わるはずがないだろう……そう思って、あくまで念のために2023年1月までの分析を行った。しかし、筆者の予想は大きく外れた。しかも、悪い方向に。
図5に、MPU、DRAM、NANDの月次の出荷額を示す。筆者は、このあまりにも無残な結果を見て、しばらく考え込んでしまった(その傍らで大谷翔平選手らが大活躍をしている姿をPCで見ている……どうしてもこの2つの対照的な事実に心の折り合いがつかなかった)。
MPUは、2021年12月の55億米ドルから、約1年後の2023年1月に、52%の29億米ドルに減少した。DRAMは、2022年5月の98億米ドルから、8カ月後の2023年1月に26%の26億米ドルになってしまった。NANDは、2022年5月の55億米ドルから、8カ月後の2023年1月に29%の16億米ドルに減少してしまった。
MPUが52%に、DRAMが26%に、NANDが29%に、それぞれ市場が縮小した。ざっくり言うと、市場規模で、MPUが半分に、DRAMが4分の1に、NANDが30%以下になってしまったのである。筆者は、この惨い数字に衝撃を受けた。
ここで、3種類の半導体について、3カ月移動平均の対前年成長率を見てみよう(図6)。2023年1月に、MPUはマイナス28%、DRAMはマイナス52%、そしてNANDはマイナス53%の成長率(というより衰退率?)になった。
これらの成長率(衰退率)は、2019年のメモリ不況や、2008年のリーマン・ショック時を超えてしまった。今よりひどい不況は、Windows 95が発売された直後の1997年のマイナス63%とITバブル崩壊後の2001年のマイナス78%しかない。そして、図6の傾向から言えば、今の不況が過去最悪レベルになってもおかしくないように思える。
それでは、MPU、DRAM、NANDを生産している半導体メーカーの業績はどうなっているだろうか? 筆者は怖いもの見たさで、これらの調査を行った。
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