今度は、DRAMとNANDを生産しているSamsungとSK hynixの業績を見てみよう。こちらも、Intelに負けず劣らずひどい状態である。
まず図9に示す通り、Samsungの半導体事業は、2022年Q4の営業利益が0.27兆ウオン(276億円)となり、対前年比で97%の減益となった。恐らく、メモリは赤字となっており、Foundryの利益によって、わずかな(ゴミのような)黒字を確保したものと思われる。そして、韓国の株式市場のニュースには、2023年Q1には、4.47兆ウォン(4572億円)の赤字に陥ると予測が出回っている。
ただし、Samsungには、半導体以外にも多くの事業があり、上記のような赤字に陥ったとしても、経営が揺らぐことは無いと思われる。実際、Samsungは、2023年に前年と同レベル(47.9兆ウォン(約5.1兆円)の投資を行うと発表している。
一方、SK hynixの業績は、Samsungよりもひどい。2022年Q4に1.7兆ウオン(1737億円)の営業赤字となり、2023年Q1もマイナス3.11兆ウォン(3175億米ドル)と赤字が拡大すると予測されている。
SK hynixの事業は、ほぼDRAMとNANDだけである。従って、このまま赤字を垂れ流し続けると、事業会社として存続できない事態になる。ただし、SK hynixの背後にはSK財閥が控えており、財閥が支えるから大丈夫だという意見がある。しかし筆者はそうは思わない。
そもそも、SK hynixは、前身のHynixをSKグループの傘下のSKテレコムが2011年に買収したことにより「SK hynix」になったという経緯がある。SKグループが、「SK hynixはお荷物だ」と思ったら、いとも簡単に売却してしまう可能性もある。必ず、SK財閥が助けてくれるという保証はどこにもない。
そして、SamsungとSK hynixには、さらなる試練が待ち受けている。
2022年8月9日、米Biden大統領が半導体の米国内製造を促進する法律「CHIPS and Science Act」(CHIPS法)に署名し、同法が成立した。このCHIPS法には、米国の半導体製造や研究開発への527億米ドルの資金投入などが盛り込まれている。
図11に示した通り、CHIPS法の補助金を受け取る候補メーカーに中に、SamsungとSK hynixが入っている。SamsungはFoundryを、SK hynixは半導体R&Dセンターや素材&先端パッケージの拠点を建設する計画となっている。
ところが、CHIPS法と同時に発表されたファクトシートには、「これらの資金に強力な『ガードレール』が付いている」ことが明らかになった。その『ガードレール』とは、補助金を受ける企業はその後10年間、中国の先端のチップ製造施設に投資/拡張することを禁じている。
ここで、先端チップとは、16/14nmのロジック、ハーフピッチ18nm以降のDRAM、128層以上の3D NANDと定義されている。これには、中国のFoundryのSMIC、DRAMのCXMT、NANDのYMTCが含まれるが、中国にとっては外資系となるTSMC南京工場、Samsungの西安工場(3D NAND)、SK hynixの無錫工場(DRAM)と大連工場(3D NAND)も含まれる。
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