図7に、MPUメーカーであるIntelとAMDの売上高推移を示す。2016年に14nmから10nmへ微細化を進めることに失敗し、その後5年以上10nmが量産できなかったIntelは、その間も売上高は順調に成長している。そして、2021年に過去最高の790億米ドルを記録したが、翌2022年に631億米ドルに減少した。
一方、もう1社のAMDの売上高は、2015〜2017年頃は、Intelの10%にも届かなかった。ところが、2018年にTSMCに生産委託して以降、売上高は急拡大し、2022年に過去最高の236億米ドルとなった。Intelに対する割合は37%まで増大した。
この売上高におけるIntelの減少とAMDの上昇は、極めて対照的である。ここから、PC出荷台数の減少によるダメージは、Intelを直撃したと言えるかもしれない。
次に、IntelとAMDの営業利益をグラフにしてみた(図8)。この結果に、筆者は2度目の「うわあ!」を叫ぶことになった。
図8-1の年次の営業利益を見ると、Intelは2020年に237億米ドルを記録するが、その後、真っ逆さまに急降下し、2022年には10分の1の23億米ドルになってしまった。そして、2018年以降、営業利益を増大してきたAMDが2022年に60億米ドルとなり、Intelを抜き去ってしまった。
四半期の営業利益は、もっと衝撃的である(図8-2)。Intelは2022年Q1に(恐らく過去最高の)81億米ドルを記録する。ところが、翌Q2にマイナス5億米ドルの営業赤字に陥った。Q3には辛うじて10億米ドルの黒字を確保したが、Q4には再びマイナス7億米ドルの赤字になった。
一方、AMDは、さすがに2022年Q4にマイナス1.5億米ドルの営業赤字になったが、Intelほどひどい状態ではない。そもそも、AMDは工場を持たないFablessであるから、市況が悪化したら、TSMCへの委託量を減らせばいいだけであり、対策は簡単である。
しかし、Intelは、社員数が13万人を超え、米国、アイルランド、イスラエルに量産工場を持ち、今も尚、アリゾナ州とオハイオ州に400億米ドルを投じて、それぞれMPU用とFoundry用の工場を建設しようとしている。
Intelは、数千人のリストラを行い、2025年までに100億米ドルのコスト削減を行うと発表している。しかし、それだけでは止血はできず、不十分である。例えば、アリゾナ州とオハイオ州の新工場建設を凍結するなど、大胆な対応策を取らなければ、会社が持たないのではないか? Intelは、図体がデカいだけに、企業存亡の危機に直面している可能性がある。
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