NVIDIAは、畳み込みアルゴリズムをはじめとするアルゴリズムのプリミティブの高速化に焦点を当て、約4年をかけて計算リソグラフィの基礎となる演算を高速化する新たなアルゴリズムを開発した(畳み込みアルゴリズムはAIワークロードにも使用され、容易に並列化できるが、計算リソグラフィで使われる他のプリミティブは並列化が難しい場合がある)。その結果、cuLithoと呼ばれる新しいCUDAアクセラレーションライブラリが誕生した。「H100」をベースとするNVIDIAの最新のGPUハードウェアプラットフォーム上で動作するcuLithoを導入することで、計算リソグラフィを従来に比べて最大42倍高速化することが可能だという。
NVIDIAのCEO(最高経営責任者)を務めるJensen Huang氏は、2023年3月20〜23日に開催された「GTC(GPU Technology Conference) 2023」の基調講演で、「(TSMCで製造している)H100は、89枚のマスクを用いている。CPUベースの計算リソグラフィでは、1枚のマスクを作成するのに約2週間かかるが、GPUベースのcuLithoであれば1枚の作成時間を8時間に短縮できる」と語った。
Huang氏は、「TSMCは、cuLithoにより、計算リソグラフィに使用する4万台のCPUサーバを、わずか500台の『DGX-H100システム』に削減でき、消費電力も35MWからわずか5MWに削減できる。これにより、TSMCはプロトタイプのサイクルタイムを短縮し、スループットを向上させ、製造における二酸化炭素排出量を削減し、2nmプロセスノード以降に備えることができる」と述べた。
TSMCは、2023年6月からcuLithoを使用して半導体製造を開始する予定である。
NVIDIAは、EUV装置メーカーのASMLおよびEDAツールベンダーのSynopsysとも提携している。
ASMLのCEOを務めるPeter Wennink氏は、事前に用意したコメントの中で、「GPUのサポートを当社の全ての計算リソグラフィソフトウェアに統合することを計画している。GPUおよびcuLithoに関するNVIDIAとのコラボレーションは、計算リソグラフィ、ひいては半導体のスケーリングに多大な利益をもたらすだろう。高NAのEUV(極端紫外線)リソグラフィの時代には特にそうなると予想される」と述べている。
Synopsys のCEOであるAart de Geus氏は、「計算リソグラフィ、特にOPCは、最先端チップの計算ワークロードの限界を押し広げている。パートナーのNVIDIAと協力し、cuLithoプラットフォーム上でSynopsysのOPCソフトウェアを実行することで、パフォーマンスが数週間から数日に大幅に加速した」と述べた。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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