本稿で説明したリリース17は、主にRedCapデバイスに焦点を当てたものですが、RedCapの機能強化は、5Gネットワークにも影響します。
最大の影響は、ランダムアクセスプロセス中や端末接続中に、ネットワークがRedCapの特定の機能に対応する必要があることです。RedCapに導入された新しい情報要素(IE)により、デバイスが実行したアクションに基づいて帯域幅を動的に適応させることができます。例えば、これらの新しいIEのいくつかは、RedCapのUEがセルにとどまるか、あるいは半二重モードを使用してとどまるかに関連しています*)。
*)RedCapデバイスがセルに接続するために必要なIEもあります。これらのIEがセルで検知されない場合、セルはRedCapデバイスの接続を禁止し、RedCapデバイスは必要なIEが存在する他のセルに接続するためにRRC手順を始めなければなりません。
もう一つの新しいIEでは、固定デバイスやセル端のデバイスに対して、RedCap緩和を適用することができます。
新しいIEには帯域幅パート(BWP)構成に関連するものがあり、UEの動作に応じて割り当てられた帯域幅を動的に適応させることで、柔軟にスペクトラムを使用し、省電力を実現します。低帯域幅は、デバイスがネットワークにアクセスするために使用するランダムアクセスチャネル(RACH)の手順に影響します。ネットワークは、RedCapデバイスのBWPを指定したり、これらのデバイスがネットワークに接続するBWPのサイズを縮小したりできます。しかし、前述したように、RedCapデバイスは最大20MHzの帯域幅で動作するので、この機能強化は、RedCapの価値を制限してしまいます。
RedCapデバイスをネットワークがサポートできるようにするには、リリース17で導入された新しいシグナリングパラメータ手順でデバイスの互換性を確認し、接続性を確保する必要があります。また、5Gデバイス開発エンジニアは、デバッグするために、RedCapパラメータを確認するツールが必要になります。
今後数年間で、5G RedCapデバイスは普及していくと考えられます。アナリストは、ことし(2023年)もしくは2024年に最初の5G RedCapのチップセットが登場し、2025〜2026年には最初の商用RedCapデバイスが市場に投入されると予想しています。
2026年以降は、民生用途では、健康モニタリングなどができる5G接続のウェアラブル機器、産業用途では、産業データ収集や資産追跡用の低コストの無線センサー、スマートシティーやスマート工場向けの監視デバイスの使用が増えるとみられていることから、商用RedCapデバイスが急成長する見込みです。
他のセルラーデバイスと同様に、5G RedCapデバイスを市場に投入するには包括的なテスト手法とテスト機器が不可欠です。5G RedCapデバイスのプロトコル準拠とパフォーマンスを検証するには、適切なテストアプローチも欠かせません。
キーサイト・テクノロジーの5Gインダストリー・ソリューション・マネジャー。 キーサイトに入社する前は、テクノロジージャーナリズム、マーケティング、広報などの分野で20年以上活動。 老舗のエレクトロニクス業界誌であるEE Timesの編集者として10年以上勤務し、そのうち何年かは編集長も務めている。 Electronic News、IHS Markit、Hoffman Agencyにも在籍経験がある。
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