Infineon Technologiesは2023年5月2日、ドイツ・ドレスデンの300mmウエハー新工場を着工した。2026年秋に稼働予定で、フル稼働時には年間で50億ユーロ程度の売上高を見込む。
Infineon Technologies(以下、Infineon)は2023年5月2日(ドイツ時間)、ドイツ・ドレスデンの300mmウエハー新工場の起工式を行った。2026年秋に稼働予定で、フル稼働時には年間で50億ユーロ程度の売上高を見込む。
Infineonは2022年11月14日にこの工場の建設計画を発表した。同社では既に、ドレスデンおよびオーストリアのフィラッハで300mmウエハー工場を稼働していて、新工場は、ドレスデンの既存工場に隣接する形で建設する。新工場では、アナログ/ミックスドシグナルおよびパワー半導体を製造する予定で、2026年に稼働を開始し、市場の動向に応じて段階的に生産量を増やしていく方針。フル稼働時には年間で50億ユーロ程度の売上高を見込んでいるという。
InfineonのCEO(最高経営責任者)を務めるJochen Hanebeck氏は起工式で、「再生可能エネルギー、データセンター、エレクトロモビリティなどの高い需要を背景に、世界の半導体需要は力強く持続的に成長している。新工場によって、2020年代後半には顧客の高まる需要を満たすことができるようになるだろう」と述べていた。
Infineonは新工場を「Smart Power Fab」と呼称。同工場は高度にデジタル化/自動化され、フィラッハの300mmウエハー工場と密に連携した「One Virtual Fab」として運用していく予定だ。また、新工場は、「世界で最も資源効率の高い半導体工場になる」(Hanebeck氏)とも説明。最新の環境技術を導入し、エネルギー消費を最適化し、二酸化炭素排出量を削減する。
総投資額は50億ユーロで同社史上最大の単独投資となる。なお、同社は総投資額の20%に当たる10億ユーロを、European Chips Act(欧州半導体法)を通じた補助金で賄う予定だ。
EUは2030年までに、現在10%程度である世界の半導体生産に占める欧州のシェアを、20%にまで引き上げるという目標を掲げ、官民あわせて430億ユーロを投じる欧州半導体法を発表。2023年4月には、欧州理事会と欧州議会が同法案について暫定合意した。
起工式には、欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会委員長のUrsula von der Leyen氏も出席した。壇上に立ったvon der Leyen氏は、半導体生産の主要地域である台湾や韓国周辺の地政学的な緊張の高まりに触れ、「貿易が途絶えれば、欧州の強力な産業基盤と国内市場に大きな打撃を与えるだろう」などと述べ、欧州内でのサプライチェーン強化、半導体生産能力強化の重要性を強調。「欧州半導体法は、域内生産の拡大に焦点を当てている。欧州の拠点に投資する半導体企業やサプライヤーのために、計画の安全性を確保するものだ」と語っていた。
ドイツ首相のOlaf Scholz氏も同式典に出席した。Scholz氏は、2030年までに総電力消費量に占める再生可能エネルギー電力の割合を80%に、2045年には完全にカーボンニュートラルにするというドイツ政府が掲げる目標に言及。その達成のためには太陽光発電、風力発電およびやヒートポンプやエレクトロモビリティの拡大などが不可欠で、それらが共通して必要とするのが半導体だとし、「われわれには半導体が必要だ。非常に多くの半導体、半導体、そしてまた半導体だ」と強調。ドレスデンでの工場建設を歓迎した。
Scholz氏はドイツおよび、欧州内での半導体設備投資の重要性を訴えつつも「これは経済圏を分離するものではない。いわゆる『デカップリング』は間違った方法だ」と述べ、「リスクを軽減し、供給源を多様化し、戦略的に独自の能力を構築することが重要だ」と説明していた。
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