レゾナックは2023年4月27日、パワー半導体用のSiCエピウエハーの事業戦略に関する記者説明会を実施した。同社は、「SiCエピウエハー事業の売上高を、5年以内に2022年比で5倍に拡大することを目指す」と述べた。
レゾナックは2023年4月27日、同社のパワー半導体用のSiC(炭化ケイ素)エピウエハー事業の事業戦略に関する記者説明会を実施した。同社は半導体/電子材料事業の一環としてSiC基板およびSiCエピウエハーの製造を手掛ける。同社デバイスソリューション事業部 SiC CTOの金澤博氏は、「SiCエピウエハー事業の売上高を、5年以内に2022年比で5倍に拡大することを目指す」と述べた。
同社は2023年1月、半導体/電子材料事業をコア成長事業に定め、集中的な投資を行うと発表している。2030年には、同事業の売上高比率を約45%(2021年は31%)にまで引き上げる計画だ。
記者説明会では、同社の「品質優位性の保持」「積極的な設備投資による供給力強化」「長期契約による安定供給」という3つの事業目標について説明された。
「品質優位性の保持」について、同社のデバイスソリューション事業部 事業部長の真壁保志氏は、「SiC基板は、化合物半導体の特性上、きれいな結晶の生成が難しく、欠陥なく製造することは難しい」とした上で、「レゾナックのSiCエピウエハーは、独自の低欠陥化技術により、基底面転位(結晶構造のズレなど)による欠陥をほぼ100%無害化できている。ゴミや異物の混入などの製造上やむを得ない欠陥は発生するが、1cm2角チップの合格率(良品率)95%以上を保証している」と説明した。
同社は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業で採択された「次世代グリーンパワー半導体に用いるSiCウェハ技術開発」の活動の1つとして、2030年までにSiCウエハー(6インチ)の欠陥密度を1桁以上削減することを目指している。
レゾナックは、SiCエピウエハーの品質向上および安定供給を目的に、2022年3月からSiC基板(6インチ)の量産を開始。同年9月には、国内で初めて国内生産の8インチ基板を使ったSiCエピウエハーのサンプル提供を開始した。記者説明会では、SiCエピウエハーのサンプルが公開された。
レゾナックがSiC事業で手掛けるのは、あくまでSiC基板加工やSiCエピウエハーの製造のみで、SiCデバイスの設計や製造は行わない。デバイスメーカーとは競合しないため、各社のSiCデバイスの設計に合わせてエピ層をデザインするなど、デバイスメーカーのパートナー企業として価値を発揮できるとレゾナックは述べる。金澤氏は、同社の特長について、「レゾナックは、カスタムメイドが基本だ。顧客の要望に合わせて製品を加工して提供している。水平分業の立場から、さまざまな企業と協業することでノウハウを蓄積し、高付加価値製品の提供に注力している」と説明した。
同社は既に、Infineon Technologiesやロームとパワー半導体向けSiCエピタキシャルウエハーに関する供給契約を締結している。
金澤氏は、「SiCエピウエハーは、材料や製造装置があれば製造できるという簡単なものではない。2000℃を超える高温環境でのバルク結晶成長やエピウエハーの低欠陥化技術など、製造自体が非常に難しい。だからこそ、(日本発の世界トップクラスの機能性化学メーカーを目指す企業として、)SiCパワー半導体を日本国内で開発/製造し、知見を積み重ねていくことに意味があると考えている」と語った。
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